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イタリアの郵便局で授乳していたママに退出命令。大臣まで巻き込み大論争に

イタリアの郵便局で授乳していたママに退出命令。大臣まで巻き込み大論争に

 

 イタリアのママさんの強さは世界中で知られているが、「子供」は確かにイタリアでは水戸黄門の印籠のような役目を果たすことが多い。「子供」を理由に、会社を早退したり休んだりというのはママだけではなくパパでもまかり通ってしまうのがイタリアなのだ。

 だから、日本の「ベビーカー論争」は、イタリアではあり得ないことだと私はたかをくくっていた。

※日本のベビーカー論争とは混んでいる電車など〇〇の場所でベビーカーを使う事の賛否。

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イタリアで授乳論争が..。大臣まで巻き込む

 ところが先日、北イタリアのビエッラでイタリアンママの逆鱗に触れる事件が発生した。若いママが、郵便局の待ち時間に生後3ヶ月の息子に授乳をしようとしたことが発端。

 郵便局員が、「奥さん、郵便局内では授乳は哺乳瓶のみと定められています。胸から直接授乳するなら、ここから出て行ってください」と退出命令を命じたのだ。

 イタリアの郵便局は、これまた局員の態度が悪いことで悪名高い。待ち時間が長い、長蛇の列にもかかわらず窓口がひとつしか開いていない、長蛇の列にもかかわらず局員たちはコーヒーを飲んで雑談をしている、エトセトラエトセトラ。

 しかし、こうしたことはあまりに日常茶飯事でたいした話題にもならなかったのだ。しかし、母性を傷つけた今回の事件は、社会問題にまで発展した。注意された若いママが、激高しソーシャルメディアを使って喧伝し続けたからである。彼女は、行政大臣のマリアンナ・マディアにも「コトの善悪を問いたい」とフェイスブックに書いた。

 怒れる若いママは、こう語る。

「私は最初、授乳とおむつの交換のためにトイレに行こうと思いました。窓口の女性に、その旨を伝えると、なぜか郵便局長が出てきました。そして、『ここは授乳とおむつ交換の場所はありません』と言うのです。さらに、『郵便局では、犬を連れてきて放し飼いにしている場合は1700ユーロの罰金もかかってきます』という、訳のわからない比喩で脅すのです。私の子供と犬を同等に扱う気でしょうか。外気温は0度だったのです。生後3ヶ月の子供になぜそんなことが言えるのでしょう。私が最も驚いたのは、郵便局内では旨からの直接の授乳は禁止されている、と言われたことでした。イタリア国内では、公共機関の建物内で胸からの授乳を禁止する法律など存在しません!」

 若いママはさらに、この事件を告訴する決意をする。

 ちょうどときを同じくして、リグーリア州のインペリアでも、レストラン内で授乳しようとした母親がレストランから追い出されたという事件が起きたばかりであったことも、彼女の後押しをしたようだ。

 彼女の呼びかけに対し、あっというまに2万6千人の署名が集まった。さらに、フェイスブック上の呼びかけで、この事件が起きたビエッラの郵便局の前で乳幼児を持つ母親たちの抗議が行われたのだ。

 彼女たちの主張はこうだ。母親が赤ちゃんに授乳をするという行為は、人間社会における最も自然な振舞である。世界保険機構も、母乳を与えることを推奨しているではないか、と。この抗議には、女性だけではなく男性も参加した。

 母性を傷つけた郵便局長に、外に出てきて説明をするように求めたが、局長は応じていない。そして、行政大臣マリアンア・マディアは、36才という若さであり、彼女も子育て真っ最中の母親である。マディア大臣は、ツィッターにコメントを載せて両者の仲介に入っている。
「イタリアのいかなる場所でも、授乳は禁止されるべきではない。あらゆる公共機関に通達する」

 郵便局や公共機関の職員たちの横柄な態度に普段からイライラしている我々にとっては、スッキリとする事件であった。しかし、「母性」という聖域にずかずかと入り込んだ郵便局員は、こうした状況を想像できなかったのだろうか。

日本人である私のイタリアでの子育て経験から言えること

 イタリアでは、一般的に女性たちの露出度が高いから、ヌードなどに対して人々はあまり過剰に反応しない。だから、電車の中であろうが公園であろうが友人たちとの会食の場であろうが、男性の目を気にせずに胸を出して授乳をするのは当たり前になっている。

 私は日本人だから、最初は羞恥心を覚えた。が、泣きわめく我が子をなだめすかせるためには、そんな感情も吹き飛んでしまう。だから私も、イタリアではかなり堂々と授乳をしていたほうだと思う。男性たちが、変な意識を持たずにそうした母親の行為を認めてくれることも、母親たちにはありがたいことなのだ。

 母親であることを理由に、世間に対し理不尽な言いがかりをつけるのはまったく本意ではない。しかし、子育てというのは生半可な覚悟でできるものではないのだ。その意味では、今回の事件はあまり頭がいいとは言えない郵便局側の失策とされても仕方がないだろう。

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