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スウェーデンでの異人種カップルへの偏見。買春や売春と同じ?

スウェーデンでの異人種カップルへの偏見。買春や売春と同じ?

 

 近年、外国人と交際、結婚する日本人女性は増えているものの、未だ「白人男性と結婚している日本人女性の特徴」等を挙げた記事をよく見かけます。そういった記事の多くは、「日本人ではなく外国人をパートナーに選ぶなんて、本人達に何か特別な身体的、人格的特徴があるに違いない」という発想に基づいています。

 異人種カップルに対する偏見はどこの国でも同じなのでしょうか?この記事では、スウェーデン在住5年の著者が、スウェーデン人は、スウェーデンに住む異人種間カップルに対してどのような感情を持っているのかについてお伝えします。

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スウェーデンの国際カップル事情とは?

 近年、多くの外国人が、スウェーデン国籍あるいは永住権保持者のパートナーとの同棲や結婚を理由にスウェーデンへ移住しています。そういったカップルの多くは、旅行先や留学先、インターネットを通じて出会っているようです。

 スウェーデンに住むスウェーデン人と外国から来た外国人というカップルだけではなく、現地在住ながらスウェーデン国外にルーツを持つ人同士、あるいは移民二世とスウェーデン人という組み合わせもいます。現地に住んでいて実感するのは、タイ人、フィリピン人を中心とした、東南アジアからスウェーデン人パートナーの元へ移住する女性は非常に多いという事です。

 多くの国では、結婚しているカップルあるいは結婚予定の多国籍カップルにのみ居住許可を交付しています。しかし、スウェーデンでは、現地でパートナーと同棲をする予定のカップルも、居住許可を申請し、現地で生活する事ができます。また、同性同士のカップルも、異性同士のカップルと同じ条件の下、居住許可を申請する権利があります。

不釣り合いなカップルへの風当たり

 スウェーデンでは異人種間カップル、多国籍カップルは非常に多いので、好奇の目で見られる事は比較的少ないです。それでも、「何語で会話してるの?」「どうやって出会ったの?」等のお決まりの質問をしてくる人は多いです。教育レベルや収入、社会的地位に極端な差のあるカップルへの先入観や「なぜ?」という視線は、スウェーデン人同士、異人種カップルの両方に向けられる風潮はあります。

 スウェーデン人と結婚している外国人女性の多くが、生活水準がスウェーデンを大幅に下回る国出身である事から、彼女達がスウェーデンで結婚する本当の目的は、スウェーデンで楽な生活をする事、実家に仕送りをする事なのではないかと疑う人も出てきます。実際に、ヨーロッパ人と結婚して国から出るのが夢と公言している女性がいるのも事実です。

 ビザ目当ての関係ではと疑われる異人種カップルに多い特徴として、共通語がない、交際期間が極端に短い、年齢差が極端に大きい等があります。このようなカップルが、旅行先、業者の仲介やインターネットサイト等を通じて出会った結果、多くの外国人女性、特に東南アジア系の女性がスウェーデンに移民しています。それについて、「女性はビザやお金が目的で、男性は女性の人格を無視し体だけを目的としているような関係ならば、買春や売春と同様なのではないか」と主張する現地人もいます。

 フィリピンやタイなどのアジア圏で、外国人観光客向けの性風俗産業が盛んであるということ、あるいはそういった店やインターネットサイト等で出会ったカップルが少なからずいるということから、アジア人の女性に対して、「少しのお金で簡単に釣れる」等と思い込むスウェーデン人男性も残念ながらいます。そのような男性から性の対象として好奇の目で見られ、不快な思いをしたことがあると語るアジア人女性も少なくありません。

異人種間カップルの偏見に対する社会的な背景

 近年、スウェーデンでは移民あるいは外国にルーツを持つ現地人よる暴行、殺人等の凶悪犯罪は深刻な社会問題となっています。性犯罪や名誉殺人等、女性が被害者となる犯罪も多発しているのが現状です。このような背景から、非西ヨーロッパ出身の男性に対して、女性の人権を軽視しているのではという先入観を持つスウェーデン人は少なくありません。そのため、外国人男性と交際しているスウェーデン人女性の中にも、周囲から、両者の文化や男女観の違いについて心配されたと言う人も多くいます。

 スウェーデン人男性による外国人女性への精神的、身体的暴力も決して珍しくありません。多くの場合、スウェーデンに移住する外国人女性は、スウェーデン語を話せず、生活の基盤もない状態で現地での生活を始める事になります。そのため、両者の間に力関係が生じやすくなる異人種間での同棲、結婚は、DVやモラルハラスメントの温床となるのではないかと心配する声もあります。

スウェーデンの男女平等社会からくる偏見

 また、フィリピンや中国等、女性の就業率、管理職の割合等がヨーロッパと同等に高い国はアジアにもあるにもかかわらず、アジア人女性=従順で、夫の為に尽くす事を生きがいとしているという固定観念を持つスウェーデン人は多いようです。実際には、語学学習後にサービス業や福祉関係などへ就職し、現地社会に貢献している女性が多いです。

 とはいえ、移住直後で語学学習中、あるいは育児中等の諸事情で就業できない女性は勿論います。そういった事情を知らずに、彼女達を見て、アジア人=専業主婦として家にいるのが当たり前だと思っている、夫に従うだけで主体性がないといった解釈をし、納得してしまう現地人もいます。また、彼女達の夫であるスウェーデン人男性に対しても、「女性一人に家事や育児を押し付け、家庭に縛り付けている」「家政婦感覚なのでは」という視線が向けられがちです。

国際結婚を機にアジア人としてヨーロッパに住むということ

 フィリピン人や中国人等、他のアジア人と同一視されるのがどうしても耐えられない、日本人として見られなければ心の平穏を保てないという人にとっては、スウェーデンや他のヨーロッパ諸国は非常に暮らしにくいというのが現状です。

 留学生としてスウェーデンに住む場合であれば、国際感覚が豊富なスウェーデン人との交友関係が中心という環境に身を置く場合が多いでしょう。しかし、スウェーデン人と結婚をし、現地で社会人として生活する以上は、日本どころか海外にも無関心なスウェーデン人達と人間関係を築いていくためのコミュニケーション能力と処世術が求められます。

 一般のスウェーデン人で、日本やアジアについて全く知識、関心がない人は、日本人の想像する以上に多いです。そのような人達にとっては、日本も他のアジア諸国も大差ないのです。だからこそ、スウェーデンに住む日本人女性も、他のアジア人女性と同じような経緯でスウェーデン人男性と出会い、同じような理由で現地へ移住しているのだろうという発想をする現地人も一部いるのです。

 このように、日本人妻ではなく、アジア人妻という見方をされて、それに関連する先入観を持たれる事はあり得ます。

現地社会を知ることで物事の捉え方は変わってくる

 人種差別や外国人への偏見に関しては、住んでいる場所や周囲の人の教育レベルによって違いがあるため、「スウェーデンで外国人に対しての差別はどの程度のものなのか」という問いに対して、明確に回答する事は非常に難しいと言えます。また、個人の人種差別への感じ方も、本人の感受性、語学力、社会的立場、スウェーデン人やスウェーデン社会への理解等によって異なります。

 スウェーデン人の異人種カップルへの感情は、反発もしなければ歓迎もしていないというのが本音でしょう。賛成も反対もしないが、移住に伴う語学学習や就職活動も、本人達の自己責任でやってくれという感覚なのだと思います。勿論、移民のためのスウェーデン語教育、職業訓練や就職支援に税金を投入する事を快く思っていない人や、全ての外国人に差別意識をむき出しにする思想の持ち主もいます。

 私自身、出会って間もない現地人との会話の中で、「スウェーデン人の夫が日本へ移住する事は考えなかったのか」「日本に帰りたいとは思わないか」等を聞かれる事があります。これは、悪意のある質問ではないのです。彼らにとっては、戦争や貧困に苦しむ国出身でもないのに、スウェーデン社会で通用する技能もなく、経済的にも夫に依存せざるを得ない状態で異国へ移住し、その土地で根を張ろうと努力をする理由が、純粋に分からないだけの話です。

 また、移住当初も、就職や就学など、今後の予定についてよく現地人から質問を受ける事がありました。海外に興味のない人にとっては、外国で生活する事に伴う苦労を想像するのは難しい事です。スウェーデン人の妻や恋人以外のアイデンティティを持ち、現地社会で自分の役割を見出し、社会参加をする事を期待するのは、現地人の感覚としては当然なのだと思います。これは、現地人による外国人への価値観の押しつけとは言えません。

 現地での生活で実感するのは、現地人目線の考え方を理解する事、自分はこの国に好きで移住した移民なのだいう現実を受け入れる事の大切さです。仕事を紹介してくれ、海外生活の大変さを理解してくれと現地人に要求する等、外国から来たお客様として扱って欲しいう考えを捨てる事で、現地人の無知や感覚の違いにがっかりするという事は少なくなります。

[参考記事]
「日本人はスウェーデンで人種差別を受けるのかに答えます」

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