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高福祉国家スウェーデンで見たガッカリな病院事情

高福祉国家スウェーデンで見たガッカリな病院事情

 

 スウェーデンは高福祉国家として有名ですが、病院に関してはそうとも言えない現実があります。実際に現地に暮らしている筆者の経験を踏まえて、説明をしていきます。

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病院に行かないスウェーデン人

 筆者のスウェーデン赴任が決まり、現地情報を集めていたら、スウェーデン人は病院に行かないという情報がたくさん出てきます。医療も福祉も高い税金で、高水準が維持されていると思っていたので、まさかという思いでした。

 日本にいたら、風邪は引きはじめの対処が大切で、悪化するまで放っておくと医者に怒られることも。しかしスウェーデンではこの逆で、悪化や長期化してようやく病院に行くよう勧められます。

 1177という、病院検索や予約が出来る電話番号とホームページがあるのですが、ここでは風邪症状の場合は「少なくとも4日以上熱が続く場合」病院を受診すると記載されています。

 個人的には風邪を引いても日本みたいにすぐに病院に行くのは反対です。やはり、薬には副作用があるし、風邪は寝ていれば治るからです。ですので「少なくとも4日以上熱が続く場合」という条件には賛成ですが、「高福祉国家」を維持するためには制限が付きまとうのだなと思いました。

スウェーデンの医療システム

 スウェーデンの国民もしくは1年以上居住予定の人は、パーソナルナンバーという日本のマイナンバーのようなものが発行されます。このパーソナルナンバーが発行される時に住んでいる場所の近くの病院(Vårdcentral)がかかりつけ医として決められます。

 スウェーデンでは風邪や怪我など病院に行きたくなったら、まず近くのVårdcentralへ連絡します。このVårdcentral、何かと理由を言って予約を取らせてくれません。「たぶん風邪だから、もう少し様子を見て悪化したらまた連絡して」と冷たく言われてしまいます。なんとか予約を取ろうとしても、よくて数日後、ひどいと1ヶ月以上先しか受け付けてくれません。

 どうしても、その日に診療して欲しい場合は大病院の救急外来か、一部の診療所が行っている時間外診療に行きます。大病院の救急外来は、重篤な患者専用なので、風邪などの症状で行っても時間外診療に行くよう追い返されてしまいます。

 時間外診療は、通常の診察が終わった17時から、休日は9時から受付。受付開始前から、大勢の人が並んでいます。長い待ち時間の割には簡単な診察で終わってしまう事が多く、スウェーデンの病院を検索すると評価は低く星3つ未満ばかり。スウェーデン人も病院の現状に不満を抱いていることが分かります。

 日本の方が病気の治療に関しては高福祉国家です。日本の医療保険システムは他国では真似ができないほど完成度が高いと言われています。

実は無料じゃないスウェーデンの医療費

 充実した社会保障のイメージから、無料と思われがちなスウェーデンの医療費。実は無料ではなく、18歳以上は年間約13000円までは自分で支払い、それを超えた分が無料となります。薬代は別で、年間約26000円までは自己負担で、それ以上が無料になります。

 18歳未満の子供は所得制限もなく、歯科矯正も含む医療費全て無料なので、こちらは日本より手厚い保障と言えるでしょう。日本では自治体により、子供に対する医療費の無料制度がありますが、全ての地域がそうではありません。

救急も待ってばかり

 スウェーデンで救急車を呼ぶときは112に電話をします。電話番号をこちらの子供は「口が1つ、鼻が1つ、目が2つ」と覚えるようです。警察や消防も同じ緊急時の共通ダイヤルなので、救急であることを伝えます。

 スウェーデンの救急車、なかなか来ない事で有名です。日本の救急車到着時間の平均が8.6分に対してスウェーデンは22分。現地ではタクシーや車で病院に向かった方が早いとも言われています。

 救急で病院に行っても、医者の診察にたどり着くまで時間かかかります。命に関わるような患者や赤ちゃんや老人が優先で大人はたいてい後回し。待っている間にも症状の重い人が来たら、そちらが優先になります。

 私の3歳の子どもも高熱と腹痛が出たため病院に行きましたが、診察まで2時間、検査待ちで1時間、計3時間待ったあげく「今は様子見。悪化したら大病院に行ってください」と薬の処方もなく、疲弊して帰ってきただけでした。

スウェーデンでの薬事情

 病院で処方箋が出るとapotekいう薬局へ行って薬を購入します。パーソナルナンバーで処方箋も管理されているので、国内どの薬局へ行ってもパーソナルナンバーを告げれば処方された薬が出てきます。

 スウェーデンは国の医療負担を抑えるため、薬の処方は最低限であることが推奨されていて、あまり薬が処方されません。抜歯後の痛み止めや、風邪の解熱剤、咳止めは薬局で自分で買うように言われます。風邪の時も血液検査をして、抗生剤が効く細菌性の風邪と判明しないと抗生物質は処方されません。

まとめ

 これらのスウェーデンの医療はスウェーデン国内でも問題視されていて、救急車の到着が遅れたり適切な治療が受けられなくて死亡した事故のニュースは頻繁に取り上げられています。

 医師の労働時間は過酷なようですが、専門医の診察がその日に受けられ、薬の処方の希望もある程度通る日本の医療のありがたさを実感します。

[参考記事]
「スウェーデンではなぜ離婚や再婚が多いのか」

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