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フランスでは当たり前の無痛分娩。私の経験を話します

フランスでは当たり前の無痛分娩。私の経験を話します

最近、日本では無痛分娩にまつわる悲しい記事をよく見かけます。犠牲になった母親やお子さんのことを思うと、胸が痛むばかりです。どれも麻酔の失敗が原因とされているようですが、読んでいると、無痛分娩=危険なイメージを持ってしまいがちです。

ここフランスでは、無痛分娩は当たり前のものとして受け入れられています。そもそもフランス人は痛みに極端に弱いので、大半の日本人なら「ちょっと痛いかも」レベルが彼らにとっては「気を失いそうに痛い」と言われることもしばしば。

普通分娩の痛みはきっと耐えがたいものだと思います。実際、フランスでの分娩において10人中8人は無痛分娩で出産しているといわれています。今回は、フランスでの私の2回の無痛分娩出産経験をもとに、フランスの無痛分娩事情についてお話ししたいと思います。

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無痛分娩を受けるにあたり

私自身、フランスでの出産経験は二回あります。しかし長女は生後九か月で病死(無痛分娩の麻酔とは関係ない理由です)してしまったため、手元にいるのは次女のみですが、二回とも出産は無痛分娩でした。

妊娠中期になると、産院の助産師さんから、出産は無痛分娩かそうでないかを選ぶようにと言われます。そこで、無痛分娩の希望を伝えると、麻酔科医との面接があります。そこでアレルギーや既往症について聞かれ、「麻酔が理由で万が一障害や事故が起きても、その可能性を了承の上無痛分娩を希望します」といった一文を読み、サインします。これが病院にとっては自己防衛の保険となるわけです。ちなみにフランスでの一般的な無痛分娩は脊椎麻酔になります。

出産当日

病院に着いて子宮口が開いている場合、すぐに麻酔科医が呼ばれ、脊椎麻酔を打つ準備にかかります。長女の時はまだ陣痛に余裕があったため、もう打つの?と思ったのですが、次女の時はかなり陣痛が進んでから病院に到着したため、準備の時間がとても長いように感じました。

脊椎に太い針を刺す前に、まずその針を刺すための局所麻酔をします。兎に角痛みには念を入れての対策。この時、背中を丸めてじっと座っていないといけないのですが、次女の時は既にきつい陣痛が始まっていたためにかなり辛かったです。

しかも、担当の麻酔科医が脊椎麻酔の針を刺す直前に激務のせいか、気を失って倒れてしまいました。もう刺す位置も印が付き、決まっていたらしいのですが、もちろん看護師さんには刺すことはできません。そこで慌てて代理の麻酔科医が呼び出され、彼女が病院に到着するまでの間、ベッドにあおむけになることも許されず、痛みに耐えながら、とても長い30分を過ごしました。

無事に針を刺し、麻酔が入ると、急に痛みは和らいできます。そして太もも辺りにも感覚はなくなってきます。しかしそれでも陣痛はゼロにはなりません。まだ痛みがきついようなら、30分から1時間ごとに呼ぶようにと言われ、麻酔科医は一度出ていきます。

出産と産後のしびれ

麻酔をしていても、陣痛のタイミングはわかりますし、多少の痛みも伴います。もちろん、普通分娩とは比べ物にならないものだとは思いますが、痛みゼロではありません。長女の時は麻酔をしてから生まれるまでに数時間かかってしまいましたが、次女の時は数回踏ん張っただけで出てきてくれたので助かりました。

麻酔のおかげで出産における体力の消耗も少なく、その後の育児もスムーズなスタートを切ることができました。産後の麻酔によるしびれは、日をかけて徐々に消えていく感じで、産後数日はまだ太もも辺りに違和感がありましたが、日常生活には支障がない程度でした。そしてそれも新生児のお世話に夢中になっているうちに気が付けば消えてゆきました。

出産前に書類にサインをしたように、フランスにおいても無痛分娩によるリスクは必ずしもゼロではないということがうかがえます。初めての時は実際、一瞬躊躇したほどです。しかし私の周りのフランス人達を見ても、みんな無痛分娩で無事に出産していますし、普通分娩と聞けば、「なぜわざわざ痛い辛い方を選ぶのかわからない」と言われてしまう始末。周りからの意見も聞いて、私は無痛分娩を選びました。

日本ではまだまだ定着しているとは言い難い無痛分娩。日本で看護師をし、フランスに移住した友人曰く、日本は麻酔科医の人口がフランスのそれよりも圧倒的に少ないせいで、無痛分娩をできる病院が限定されてしまうのではないか、と話していました。それも一理あるのかもしれません。しかし、いつか日本にも安全な無痛分娩という選択肢が当たり前のように登場し、定着すれば、例えば持病持ちの妊婦さんの身体的負担なども減るのではと思います。

[参考記事]
ハワイで出産しました。無痛分娩だったが難産で苦しむ

 

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