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店員から無視?フランスの人種差別について

店員から無視?フランスの人種差別について

時折、パリの通訳ガイドをしている私ですが、日本からいらしたお客様に、フランスに人種差別があるかないかとよく聞かれます。返事は残念ながら、確実に「差別はあります」。実際、パリに14年住んでみて、この人種差別を受けて、公共の場で泣かされたこともあります。今回はそんな私の体験を織り交ぜながら、フランスの人種差別について書いてみたいと思います。

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ニーハオ?

地方都市にはそれほどではありませんが、パリには大きな中華街が13区と20区にあります。どちらもフランスに移住してきた中国人達が商売をし、彼らの生活が根付いている地区になっています。彼らは独自のコミュニティを築き、長年フランスに住んでいるにもかかわらず、日常生活の全てが中国人コミュニティで済んでしまうせいか、フランス語を話さない中国人も沢山います。

しかしその子供達は、フランスで現地の学校に通っているので、子供達は両親よりもフランス語が達者です。子供達、見た目はアジア人ですが、話してみれば中身は若いフランス人の話し方そのものだったりします。いわゆる中国系フランス人です。

中華街以外にも中華料理のお惣菜を量り売りで買い、その場でイートインもしくはテイクアウトができる軽食レストランも市内のあちらこちらにあります。そのせいか、アジア人=中国人と思われるらしく、道を歩いていてもすれ違いざまに、ニーハオと声をかけられることもあります。経験上、この場合、大抵声をかける方もアラブ系など、移民である場合が多いです。

そこで、「私は中国人じゃないからニーハオではない。」と言い返せば「中国人も日本人も中国語でしょ?」とのたまう始末。彼らに悪意はないとしても、アジア人皆一緒にされては、ちょっと後味も悪いです。きっと中国人にしても、日本人や他のアジア人と自分達がごちゃまぜになっているのは気分が良くないと思います。しかし、これは差別というよりも勘違いのレベル。そこまで目くじらを立てるほどの話ではないのです。

路面店にて、店員から無視?

ある日、パリ中心街の靴屋の路面店で靴を見ていた時の話です。気になる靴があったものの、私のサイズが店頭には出ていなかったので、そばにいた白人系フランス人の店員さんに声をかけようとするものの、私が近づくと急に忙しそうに他へ逃げてしまい、こちらの呼びかけが聞こえないふり。始めは、本当に忙しいのかと思っていましたが、私の後から入ってきた白人系マダムには愛想よく話しかけているのを見て、「またか。」と思いました。

こういう少しわかりにくい人種差別は日常茶飯事で、日本からいらっしゃったお客様も気が付かない場合が多いです。要は、フランス語をまともに話すかどうかも怪しいアジア人の相手はしたくないのだと思います。特に近頃は、東京や京都と同様、パリも中国、韓国を始めとしたアジア系の観光客は増加の一方ですから。幸いこの時は、もう一人の黒人系フランス人の店員が私の相手をしてくれました。こんな嫌な思いをしたら、もうそのお店に行かなければよいだけの話です。

バスの車内にて、人種差別に泣かされる

娘を妊娠していた時の話です。臨月でお腹の大きかった私は、バスで産着を買いに出かけました。すると、バスの中央にある優先席が空いたので、そこに座ろうとしたら、後から乗ってきた白人の老婦人に「お前はフランス人でもないし、ましてや戦争の時は何もしていないだろ?そんなアジア系移民が優先席に座る理由などない!座るな!」と怒鳴られたのです。

最初はあまりの攻撃的な言葉に、あっけに取られてしまった私ですが、やっと意味が飲み込めると、言い返すどころか悔しさで涙があふれ、まともに立っていられないほどの震えに襲われました。

そんな私を脇から支え、助けてくれたのは、髭をたんまりと生やしたアラブ人の老人男性でした。さらにそばで席に座っていた高齢の黒人女性が私に席を譲ってくれ、そのアラブ人男性と共に「あんな人の言うことは気にするな。可哀想に、あのマダムは頭がおかしいのだから。忘れなさい。」と慰めてくれました。

泣きながらも、移民である彼らの優しい気持ちに触れ、差別された悔しさと、被差別側である彼らに助けられたありがたさで、その日は頭がいっぱいになりました。

帰ってから、白人系フランス人である主人にこの話をすると、やはり「それはそのお婆さんが頭おかしいよ。たまたま事故にあったようなものだから忘れなきゃ。」と言われました。ちなみに普段、私が外で感じた差別の話などすると、白人である彼からは大抵「君の思い過ごしだよ。」の一言で済まされてしまいます。しまいには、「被害者意識が強いんじゃない?」と言われてしまうので、外で差別されてもあまりその話はしなくなりました。

多分、白人系フランス人である彼には、そのあたりの被差別側の悔しさは理解に難しいのだと思います。実際、フランスのテレビでも活躍している白人系フランス人ジャーナリストの友達に人種差別にあった話をしても「フランス人が人種差別なんてするわけないでしょ?君の思い過ごしだよ。」で片づけられてしまうのです。もしくは心の奥底ではその事実を知っていても、彼らは自分からあえて認めたくないのかもしれません。自分の国で人種差別があるなんて、彼らにとってはネガティブなイメージですから。

少しでも差別を防ぐために

一時期、フランスのメディアで、就職の際の人種差別についてリサーチをしたことがありました。経歴は全く同じままに、履歴書の名前を移民系にしたものと、フランス系にしたもので、ある会社に応募をしたのです。すると、経歴は同じなのに移民系のものは面接の連絡すら来ず書類審査で落とされ、フランス系の名前の履歴書は、書類審査合格、面接の連絡がきたというのです。

これは明らかにその人の経歴、もしくは能力で評価せず、あからさまに名前だけで移民は差別されるということを証明しているということになります。ちなみに私が卒業したパリ第八大学の試験では、毎回答案用紙に記入した名前部分は折って隠してから提出するようにと指示されていました。かなり左翼系の大学でしたので、先生たちの生徒に対する差別やえこひいきを防ぐ目的があったのだと思います。

両親は移民だけれど、子供はフランス生まれのフランス育ち、少しでも子供の未来を明るくしようと、あえてフランス系の名前を子供につける移民たちもいます。実際、娘の幼稚園のクラスメイトに中国系の女の子がいますが、名前は完全フランス名です。我が家も、やはり娘にはフランスでも通用する発音、そこまでは珍しくはない名前をつけています。今の日本は、欧風の名前の子供も沢山いるので、幸いなことに日本に行っても娘の名前はさほど悪目立ちせずに済んでいます。

パリは移民が多いので、特に人種差別が多いようにも思いますが、地方にいくと移民の人口自体がパリに比べ少なく、アジア人とすれ違うことも稀、ゆえに周りのフランス人達から好奇のまなざしで見られることもしばしばあります。一度、地方に旅行した際、現地のフランス人に「日本と言えば毛沢東でしょ?僕、彼の本を読んだよ。」とちぐはぐな会話をしてくるフランス人もいました。思うに人種差別というのは、見慣れない国の人達に対する、意味もない恐怖心やその国に関する知識不足が作り出すネガティブな感情なのだと思います。

フランスにご旅行の際は、もしも不本意な人種差別にあっても、すぐに忘れてしまうのが得策です。 嫌な感情を引きずっていては、折角のフランス旅行が台無しになってしまうのはもったいないですから。

[参考記事]
「日本人はスウェーデンで人種差別を受けるのかに答えます」

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