高速道路を走行していると、ごく稀に時速140㎞近くは出しているであろうと思われる暴走運転車に出くわすことはありませんか?
以前の筆者はそんな車を横目で眺めながら、「あんなスピードで走っていたら生きた心地がしないな…」などと思っていた記憶があります。
しかし、ドイツを初めて訪れて以来、時速140㎞という速度に対する私の考え方は180度変わってしまったように思います。
貧乏旅行で“カーシェアリング”をする羽目に
それは私が初めてドイツを旅行で訪れた時のこと。
ドイツの電車賃は日本と比べてもかなり高めに設定されているため、貧乏旅行をしていた当時の私にはそんな高い料金を払う余裕はなく、インターネット上で安い交通手段がないか色々と調べていました。
するといわゆるカーシェアリングサイト、つまり遠方の地を自分の車で訪れる人がインターネット上で同乗者を募り、比較的安い料金を支払って車に同乗する、といったサービスを行っているサイトを見つけました。
しかも、ちょうど私が移動を予定していた日に、かなりお安い料金で目的地までたどり着けるプランがあったんです。電車賃と比べると破格の値段ということで、これに私はすかさず申し込みました。
温厚そうな中高年が豹変
他人の車に同乗させてもらうということで、その日は「一体どんな人が乗せてくれるんだろうか…」とドキドキしながら過ごしていたのを覚えています。
けれどもいざ約束した場所に行ってみると、同乗させてくださる方は温厚そうな中高年のドイツ人男性で、「この人なら安全運転してくれそうだな」と勝手に過信をしてしまいました。
車に乗せていただいてからしばらくの間は町中を走っていたものの、目的地までは400㎞以上離れていたため、途中で“アウトバーン”を走行する旨を伝えられました。
“アウトバーン”は日本でいうところの高速道路にあたります。支払う金額が同じ以上、早く目的地に到達できるに越したことはないので、「No problem!」とか言ってしまったように思います。
けれどもこの後すぐに私は強く後悔することとなりました。
速度制限なしの怖さ
アウトバーンに入る直前までの私は、旅の疲れからか少し眠気を覚えていたのですが、いざアウトバーンを走り始めると、すぐに異変に気付きました。
明らかに速度が速いんです。周囲の景色がぐんぐんと後ろに流れていくのを感じます。
思わず「今時速何㎞で走ってるんですか?!」と尋ねると、
「怖いの?でも“たった”180㎞だよ!」とさらりと言ってのけるドイツ人。
「えっ、でも時速180㎞って速すぎるんじゃないんですか?!」
「そんなことないよ!アウトバーンは“速度制限なし”だからね!ポルシェとか200㎞以上で走っている車も普通にいるよ!」
確かにそうして会話をしている間にも、1台の車が時速180㎞超えで走行している私たちの車を追い越していきました。もう眠いとか言ってるどころじゃありません。
なぜドイツのアウトバーンには速度制限がないのか?
しかしなぜドイツのアウトバーンには速度制限がないのでしょうか?
はっきりとした理由はわかりませんが、これにはアウトバーンの歴史が関わっているような気がします。
実はアウトバーンの歴史は古く、アウトバーンはかの悪名高いヒトラーの経済政策の一環として構築されたものだったのです。
ヒトラー率いるナチスが台頭する前の時代、第二次世界大戦で敗戦国となったドイツには失業者が溢れていたそうです。
そんな失業者達の支持を獲得するため、ヒトラーは国際自動車ショーの場を借りてアウトバーン建設計画を発表しました。それと共にアウトバーンの工事に当たり、機械導入を極力抑えあえて失業者を雇用することで、失業率の低下に成功したそうです。
この際最初に開通したのがフランクフルトからダルムシュタットまでの40㎞にも満たない短い区間だったそうですが、ここでメルセデスベンツをはじめとする複数の自動車会社が自社の車の最高速度を競い合ったそうです。
当時の自動車の最高時速がどれほどのものだったのかはわかりませんが、最高記録を競い合う場となったアウトバーンに今でも速度制限がないのはうなずける気がしますね。
ちなみにアウトバーンの一部区間は“シュネルシュトラーセ”といって、速度制限がある区間になっています。ここで時速100㎞程度で走っていたからといって、ひとたびアウトバーンまで出たらドイツ人は平均で140㎞超で走ります。ドイツで同乗させてもらう際にはくれぐれもシートベルトの着用を忘れないようにして下さいね。
[参考記事]
「ドイツ人男子に童貞が多いワケとは」
Leave a comment