
海外旅行は新たな文化との出会いや、非日常を体験できる貴重な機会ですが、渡航先の治安については十分なリサーチと注意が必要です。世界には政治的不安、武装勢力の台頭、麻薬カルテルの影響などにより、旅行者にとって危険性が高いとされる国が存在します。
本記事では、特に注意すべき5つの国を紹介します。いずれも渡航の是非を慎重に検討すべき地域であり、日本の外務省や国際機関からも「渡航中止勧告」「退避勧告」が出されていることがあります。2024年時点の情勢をもとに、各国の現状を詳しく解説します。
1. シリア:長引く内戦と無秩序な治安状況
シリアでは2011年に内戦が勃発して以降、国家としての統治機能が大きく失われています。アサド政権、反政府勢力、クルド人勢力、さらには過激派組織イスラム国(IS)など、複数の勢力が入り乱れる混沌とした状況が続いており、現在でも空爆や地上戦が散発的に行われています。
主要都市のダマスカスやアレッポでさえ治安は不安定であり、外国人旅行者が誘拐されたり、テロの巻き添えになるリスクも非常に高いとされます。国連やNGOも活動が制限されており、医療体制や通信インフラも壊滅的な状態です。
外務省も「退避勧告」を出しており、いかなる目的であっても渡航は避けるべきとされています。
2. ハイチ:政情不安と治安崩壊の現実
カリブ海に位置するハイチは、美しい海岸と自然が魅力の国ですが、2021年のジョヴネル・モイーズ大統領暗殺以降、無政府状態とも言える情勢が続いています。
首都ポルトープランスを中心に、武装ギャングが治安を牛耳っており、警察すら手出しできない地域も多数存在します。通行中の車両が襲撃されたり、外国人を狙った誘拐事件も頻発しており、観光目的での渡航は非常に危険です。
国連などの報告では、2023年だけで1,000件を超える誘拐事件が報告されており、住民の移動すら困難な状況です。病院や公共機関の機能も麻痺しており、仮に事件や事故に巻き込まれても、適切な対応が困難である点も懸念されます。
3. アフガニスタン:タリバン政権下の厳しい現実
2021年8月、アメリカ軍の撤退とともにタリバンが首都カブールを制圧し、事実上の政権復権を果たしたアフガニスタン。タリバンは治安維持を公言していますが、実際には複数の過激派組織(例:ISIS-K)による爆破事件や襲撃が後を絶ちません。
外国人に対する敵意も強く、特に欧米・日本人はターゲットになりやすい傾向があります。公共交通機関や市場、宗教施設など、日常的な場所でさえも突発的な攻撃のリスクがあります。
また、女性の権利や自由な行動が著しく制限されており、特に女性旅行者は極めて厳しい環境に置かれる可能性があります。外務省も「退避勧告」「渡航中止勧告」を発出しており、現時点ではいかなる理由であっても渡航すべきではない国です。
4. ソマリア:無政府状態に近い国家と海賊の脅威
アフリカ東部に位置するソマリアは、1991年の内戦以降、中央政府の機能がほぼ失われた状態が続いています。首都モガディシュ周辺では、イスラム過激派「アル・シャバブ」による爆破テロや銃撃が頻発しており、旅行者にとって極めて危険な地域です。
また、ソマリア沖は世界有数の「海賊」出没地域としても知られており、貨物船や観光船が襲撃される事件も報告されています。道路上での検問や不法な課税、さらには外国人誘拐事件も散発的に発生しています。
観光インフラが事実上存在しないため、滞在中に事故や病気が発生しても適切な医療が受けられる保証はありません。事実上の無法地帯ともいえる状況であり、渡航は厳に慎むべきです。
5. ベネズエラ:経済崩壊と暴力犯罪の蔓延
南米のベネズエラはかつて豊富な石油資源を背景に経済成長を遂げた国でしたが、近年は深刻な経済危機と政情不安により、治安状況が急速に悪化しています。
首都カラカスでは、強盗、誘拐、殺人といった暴力犯罪が日常的に発生しており、日中の移動すら危険とされています。経済崩壊による失業とインフレ、医薬品や食料の不足が重なり、国民生活は困窮を極めています。
旅行者を狙った詐欺や強盗も多発しており、外国人が犯罪に巻き込まれるリスクは非常に高いです。公共交通やホテルでさえ安全とは言い難く、現地での行動は著しく制限されます。
外務省は渡航中止勧告を出しており、在ベネズエラ日本大使館も「極めて高い警戒」が必要としています。
渡航を検討する際の重要なポイント
治安の悪い国を訪れる際には、以下の点を必ず考慮すべきです:
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外務省「海外安全ホームページ」で最新情報を確認する
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渡航前に緊急時の連絡手段(大使館、保険、避難ルート)を確保する
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信頼できる現地ガイドや通訳の同伴を検討する
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SNSなどで現地情勢のリアルタイム情報を収集する
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万が一のための十分な海外旅行保険に加入する
まとめ
世界には魅力的な観光地が多数存在する一方で、治安上の理由により渡航が強く制限されている国もあります。本記事で紹介した5カ国――シリア、ハイチ、アフガニスタン、ソマリア、ベネズエラ――は、いずれも深刻な治安問題を抱えており、旅行者が巻き込まれる危険性が非常に高い地域です。
「絶対に行くな」と断言するというよりも、「今は行くべき時期ではない」と理解し、情勢が落ち着くまで渡航を控えることが賢明です。安全な旅は、情報収集と冷静な判断から始まります。世界の平和と安定が一日でも早く実現することを願いながら、リスクを十分に理解した上で旅の計画を立ててください。
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