一般的に日本人は英語があまり得意ではない、というのはよく言われることです。それに対し、ヨーロッパ人はたとえ英語圏の出身でなくても流ちょうに英語が話せる、というイメージはありませんか?
ヨーロッパ系の言語はそれぞれ単語も文法も異なってはいるものの、似通った部分も多く、英語を話すのはそんなに難しいことではない、というのは多くのヨーロピアンが口にすることです。
出身国が異なっても、英語という共通言語で様々な国の方とコミュニケーションが取れる、というのは英語が苦手な日本人からするとちょっと羨ましく映りますよね。
しかし、それでも全てのヨーロッパ人が英語が得意、というわけではもちろんなく、欧州の国によっても英語の得意不得意は異なるようです。
そこで今回はドイツでどれほど英語が通じるのか、実際に筆者が試してみました。
田舎に住むドイツ人でも英語は話せる?
日本でも東京や大阪といった大都会に比べ、田舎の方がどちらかというと英語が通じなさそうなイメージがあるかと思います。そこでまずはドイツの田舎でスーパーに行き、英語を使って鶏肉を買ってみることにしました。
訪れた先はドイツで最もよく見かけるスーパーマーケットの一つ「K+K(カーウントカー)」、そしてそこの精肉店にいたのはちょっと不愛想なドイツ人のおばさんでした。
私「鳥の胸肉一枚下さい(英語)」
ドイツ人「ビービッテ?(ドイツ語)」(=今なんて?)
私「…(指差し)」
ドイツ人「オケーイ」
英語は通じませんでしたが、この時はなんとか指差しでコミュニケーションが取れました。
ちなみにその次も同じスーパーを訪れてみると、その日は若い愛想の良い男性店員が対応しており、「ハロー!」と自ら声をかけてきたので、前日と同じように英語で「鳥の胸肉一枚下さい」と注文してみました。すると「オケーイ!他にも何かいる?」とごく普通の対応でした。
その後もスーパーやカフェで色々と英語で注文してみましたが、全体的に若い方の方が英語が分かる印象を受けました。日本でもおじいさんおばあさんよりも若者の方が英語がわかる、というのと同じことかもしれません。
大都会ベルリンではどうなのか?
次は田舎を離れ、ドイツ一の大都会であり、多くの外国人も暮らすベルリンを訪ねてみました。
この日は国外の航空会社で客室乗務員をしている友人と会う予定があり、ベルリンのホテルで落ち合うことに。彼女はアジア系の航空会社で国際線の乗務員として働いているだけあり英語は流ちょうに話せるものの、ドイツ語は全くわかりません。
そんな彼女からすると、英語を“試す”までもなく、英語でしかコミュニケーションが取れないので、彼女とドイツ人のやり取りを静観することにしました。
すると早速、コーヒーを飲みたいらしい彼女がホテルのコーヒーメーカーを前にドイツ人ホテルスタッフに英語で話しかけ始めました。
友人「コーヒー飲みたいんですけど、これどうやって使うんですか?」
ドイツ人「横にあるこれを中に入れて、ここのボタンを押せば飲めますよ!強いコーヒーが好きならこれがいいからこれを中に入れて…」
友人「強いコーヒーは苦手なんで、もうちょっと弱いのないんですか?」
ドイツ人「だからこれが強いからこれを入れて…」
友人「…」
途中まではよかったものの、会話が全くかみ合っていません。
その後も何度かホテルスタッフと彼女とのやり取りを見ていましたが、どうやらフロントマン以外のホテルスタッフは英語は一応話せるものの、流ちょうな英語でひとたび返されてしまうと、よく意味が理解できないようでした。
なぜドイツ人は英語が苦手なのか
友人とドイツ人のやり取りを見て感じたのは、ドイツ人は英語が話せないわけではありません。しかし英語が話せるにも関わらず、英語で相手が言ったことを完全に理解することができず“わかったふり”をして対応する、ということが非常に多いんです。
それではなぜドイツ人は英語が苦手なんでしょうか?
理由としてはいくつか考えられるかと思いますが、最も大きな理由にはドイツ語と英語の文法構造の違いが挙げられると思います。
ドイツ語はヨーロッパ系の言語の中でも学ぶのが難しい言語のひとつ、と言われていますが、ドイツ語の動詞は複雑に変化し、使用方法が非常にわかりにくい上、英語には存在しない“分離動詞”というものが存在します。
“分離動詞”とは文字通り分離する動詞で、一つの動詞が使いようによって分離したりくっついたりします。さらに分離する場合には、動詞の後ろの部分がセンテンス内で2番目の位置に来るにもかかわらず、頭の部分は文章の一番後ろにくるため、それ以外の要素を動詞の間につめこむことになり非常に混乱しやすくなっています。
彼女はまもなく大阪へ転居する
Sie bald nach Osaka umziehen.
←最後にある動詞本体だけが2番目に移動┌──────────┘
Sie zieht bald nach Osaka um.
umziehen は分離動詞なので,動詞本体だけを2番目に動かして,前綴り um は文末に残ります。
東京国際大学のホームページより引用
しかし、このような文構造に慣れてしまっているドイツ人からすると、動詞を常に頭の方に持ってくる英語の方が逆にわかりにくく感じるのかもしれません。
皆さんもドイツを訪れる際には誤って解釈されトラブルにならないよう、くれぐれも気を付けてくださいね。
Leave a comment