
近年、中東の経済ハブとして存在感を高めるドバイは、タワーマンションが立ち並び、治安も良く、日本人の移住先・駐在先として人気が高まっています。
しかし、意外な落とし穴として語られるのが「大気汚染」です。優雅な砂漠リゾートのイメージとは裏腹に、ドバイの空気は決してクリーンとは言えず、環境負荷の高さから健康トラブルを抱える人も増加しています。
この記事では、移住検討者のために、ドバイの大気汚染の実態・原因・注意点・対策・住むべきエリアについて詳しく解説します。
なぜドバイは大気汚染が深刻なのか?
1.砂漠の砂(砂嵐)による粉塵
ドバイは自然環境的に「砂漠気候」に位置しており、冬〜春にかけて強烈な砂嵐が発生します。細かな砂塵が風に舞い上がり、視界が白く霞む状態になることもしばしばあります。
この砂粒は非常に細かく気管支に入りやすいのが特徴で、PM10やPM2.5の濃度が急上昇し、くしゃみ・咳・喉の痛み・ぜん息悪化を引き起こします。
2.車社会による排気ガス
石油国家であるUAEでは燃料費が安く、人々は大型SUVや高級車を日常的に乗り回します。
その結果、大気中には窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素が大量に放出され、渋滞が多い時間帯は東京以上に排ガスが濃厚になります。
3.建設ラッシュによる粉塵
ドバイは今もなお巨大な建設プロジェクトが各地で進行中です。ビル建設、道路整備、人工島開発など、コンクリート破砕や重機の稼働により、常に粉塵が舞い上がった状態となっています。
4.気象条件が拡散を妨げる
ドバイは年間の大半が風が弱く晴天続きであるため、汚染物質が上空に逃げずに滞留する傾向があります。この“空気のよどみ”が慢性的な大気汚染を生み、空を茶色く霞ませています。
世界ランキングでも上位に入る汚染レベル
スイスのIQAirが発表した「世界空気汚染ランキング」では、ドバイを含むUAEはPM2.5濃度で世界ワースト40位圏内に入ることが多く、実は空気が悪い国として国際的に知られています。
WHOの基準値を大幅に超える日が年間の半分以上あり、「移住したら喉が常にイガイガする」「子供が咳込んで夜寝られない」といった口コミも珍しくありません。
どんな健康リスクがある?
・喉の痛み、咳、鼻炎、目のかゆみ
・ぜん息・気管支炎の悪化
・頭痛・倦怠感・集中力低下
・子供の肺機能発達の遅れ
・妊婦の低体重児リスク増加
特に小さなお子さんがいるファミリー移住の場合、大気汚染は軽視できない問題です。空気清浄機がないと室内でも粉塵を吸ってしまい、長期的に健康影響が出てくる可能性があります。
移住を検討するなら知っておきたい“季節変動”
ドバイの大気汚染は、季節・時間帯によって強弱があります。
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冬〜春(12月〜3月) → 砂嵐シーズン、粉塵が激増
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夏(6〜9月) → 暑すぎて車移動が増え排ガス濃度アップ
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朝夕のラッシュ時 → 車の排ガスでPM2.5濃度高騰
逆に10月〜11月あたりは比較的空気が落ち着いており移住しやすい時期といえます。
このタイミングで現地視察を行うと「意外と空気がきれい」と錯覚する人もいますが、季節によって大きく変動するため、一度砂嵐期にも滞在して体験しておくことが重要です。
住むエリア選びで汚染を避けられる?
以下は「比較的空気がマシ」とされる居住エリアの例です。
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Dubai Hills / Arabian Ranches:緑地が多く風通しが良い住宅地
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Jumeirah Islands:人工湖に囲まれ排ガスのたまりが少ない
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Palm Jumeirah(パームジュメイラ):海風で汚れが流れやすい
反対に以下のエリアは注意:
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Sheikh Zayed Rd沿い → 交通量多・排気ガス地帯
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Business Bay/Downtown → 工事・建設ラッシュ真っ只中
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工業エリア近接地 → 粉塵・オイル臭が発生
移住する際は住環境視察の際に「周りで工事していないか」「交通量が多すぎないか」「毎日空が茶色く曇っていないか」を要チェックです。
大気汚染対策はどうすればいい?
・高性能空気清浄機を必ず導入
HEPAフィルター搭載モデルを選び、寝室・子供部屋・リビングに設置すると効果的です。
・車は空気循環モード+車載空気清浄機
外の空気を遮断し、内気循環モードにして車移動するだけでもかなり違います。
・“AQIアプリ”で日々の空気を確認
AirVisualやPlumeなどのアプリで、外出前にPM2.5レベルを確認しましょう。「今日は危険」と出た日は外遊びやランニングを控えるのが賢明です。
・マスク着用を習慣に
砂嵐時にはN95マスクを使うことで、気管支へのダメージを軽減できます。
子供や高齢者がいる家族移住は注意が必要
大気汚染は小児・高齢者・妊婦の健康により大きな影響を及ぼします。喘息やアレルギー鼻炎持ちのお子さんは、発作が増える可能性があるため、日本にいる時以上に注意が必要です。
学校によっては「屋外体育中止」の基準を設けているところもあり、国際校を選ぶ際には屋内プレイエリアや空調設備の質も確認しておくとよいでしょう。
結局、移住するべき?しないべき?
▶ドバイ移住が向いている人
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大気汚染対策の生活習慣を取り入れる覚悟がある
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大人だけ or 子供がすでに中高生で健康面に自信がある
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仕事やビジネス面でドバイに住むメリットが大きい人
▶向いていない人
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幼児・乳児、高齢者がいる家庭
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呼吸器系疾患(ぜん息、鼻炎)がある人
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クリーンな自然環境を求めている人
まとめ:美しい街には“空気汚染”という影が潜む
ドバイは華やかな大都市である一方、空気がクリーンな国とは言えません。特に、砂塵・排ガス・建設粉塵がもたらす大気汚染レベルは、移住者の健康を直撃する現実問題です。
とはいえ、対策を取りながら暮らすことでリスクは軽減できます。「移住=憧れ」だけで突き進まず、実情を知った上で環境に適応できるかを考えることが成功のカギです。
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