昨今、結婚活動の省略形である「婚活」という単語が一般化しました。適齢期を迎えた男女が、結婚相手を探す活動をそう呼んでいます。
恋愛関係にある男女が自然な形で結婚に発展する恋愛結婚以外では以前はお見合い結婚が主流で、適齢期の未婚の男女をお世話してくれるおせっかいというか、親切というか、仲を取り持ってくれる方がいて、結婚を前提に見知らぬ男女が知り合い、気が合えば結婚に至っていたものです。
ところが草食系男子が増えたり、女性の就労意識が高まったり、そもそも男女関係を不要に感じる人たちが増加したりと、適齢期という概念や、結婚意識も時代と共に変化しています。
中国でも似たような状況が生まれています。その象徴的な光景を休日の公園で観る事ができるのです。その事についてちょっとご紹介致しましょう。
<過保護な子供を生みだした世紀の愚策>
ご承知の方も多いと想いますが、1979年から中国は一人っ子政策という人口抑制政策を実行して来ました。余りにも多い人口を抑制する為に、夫婦は一人しか子供を産ませないことにした愚策です。
その結果、家族には子供が一人だけになったので、一定の人口抑制効果はありました。一方で、一人っ子特有の問題がはらむ様になりました。
最も顕著な例は、「甘やかし」です。両親の両祖父母と両親という6人からの愛情を一人の孫(子)が一手に引き受ける事になったので、過剰な愛情が一人の子供に集中することになりました。他に兄弟が生まれないのですから、お爺さんお婆さんと両親は、一人の子供に愛情を降り注ぎます。
その時代背景に、一人の子供に対する愛情が集中した結果、お金が子供に集中して行きます。衣食住の環境が飛躍的に発展し、洋服、食事、おもちゃ、習い事、進学などに多くのお金が使われる様になりました。
つまり一人の子供に対する過保護な環境が増大してしまったのです。これが一人っ子政策の最大の問題点です。
元々中国の人達は、筆者の主観では日本以上に家族親族を大事に考える国民性を有しています。その国民性を土台にして、一族の期待を一身に受ける新生児への過度な期待は、言葉悪く言えば過保護な環境下で子供たちを培養する結果を招いてしまいました。
<自力解決能力の乏しい若者が増大>
その昔、中国では知識階層が政権から排除されるという世紀の愚策が実行されました。文化大革命と称されたその愚策は、北京の中枢以外に知識階層を認めないという、いわば一般市民の締付けでした。
一般市民は国営企業の従順な労働者たれという専横政治は一定期間続き、その時代に高等教育を受けるべきだった年代の人達は、高等教育を殆ど受ける事もできませんでした。
現代はその逆で、高校卒業者の大半は大学進学をするという時代に変貌しています。日本でも指摘されていることですが、大学という名の教育機関が林立した事は、高等教育機会が広がったという意味では民主的ですが、極端にレベルの低い学校でも大学化しており、大学の価値が下がってしまう結果に陥っています。
父母や祖父母の時代には大学に進学できなかった事から、孫や子には大学進学をさせたいという親族の願いで多くの学生が大学生となった結果、大学生が巷に溢れる結果になりました。
大学生は一流の企業に就職できると勘違いしてしまい、ステイタスの低い職種に人が集まらず、偏った就職競争が行われる結果になり、未就職の大卒者を多数輩出する事態になっています。
しかも、この世代は過保護に育った一人っ子世代。自力解決能力が低く、大学を卒業しても家にパラサイトするというケースが多発しています。あわよくば就職できたとしても、自力解決能力に乏しく、仕事もままならなければ、プライベートでも問題が生まれています。恋愛できない症候群と、結婚できない症候群です。
その上で、世の中はネット時代。WEBのSNSやゲームに依存する生活は、過保護に育った若者をより個の世界に向かわせています。ですから、現代中国の若者事情は、かなりヘビーな状態にあると筆者は思っています。
休日の公園は親達の婚活で大賑わい
恋愛も結婚もできない適齢期の子供を抱えた親達は、一念発起し行動を開始します。親自らが自分の子供たちの結婚相手を探す積極的な行動に出たのです。
自ら過保護な育て方をした結果、子供が恋愛も結婚も出来ない事態に陥っているので、こういう行動に出るのは罪滅ぼしでしょうか。それとも、どこまでも過保護な育て方の癖が抜けないのでしょうか。
いずれにせよ、自分の子供のアピールポイントを紙に書いて、休日の公園に行って、張り紙をして相手を探す事が一般化して来ました。上海市内の中心部にある人民広場に日曜日に脚を向けると、中年の男女が多数集まっている場所があります。太極拳の集まりだろうかと近づいてみると、何やらそこかしこで立ち話をしているのです。
その集団の周囲を見ると、各自A4サイズの紙に何やら書いてPRしていたり、周囲に縄を貼ってその紙が無数にぶら下がっていたりするのです(上の写真)。
求人広告かなーと思いきや、良く見ると、求人広告ではなくて人のプロフィールが書かれています。
「89年生れ男性、○○大学□□学部卒業、留学経験有り、外資△△公司勤務、年収◇◇万元、マンション持ち、性格温厚、身長1m70」などと書かれています。
何だこれ?!と思いますが、これは自分の子供達の結婚相手を見つける親どうしの商談会。中国語では「相親角」と言うそうで、いわば「親のお見合いコーナー」とでも訳しましょうか。
立ち話をしている中年の人達を観ていると、必死に相手の子供の事を尋ねています。その数は数人ではなくて、数十人、いや数百人以上でしょうか。みなさん必死に子供の事を尋ね合っているのです。
これが現代中国の若者事情の一端です。過保護な中国の若者達の為に、親たちはここまでしているのです。
<まとめ>
この行動は、必死な親心の発露として好意的に見る事ができる半面、中国の若者たちに対する親の過保護振りを知る機会にもなります。現代中国の若者達は、一人っ子政策の結果、こんな状態になっているのです。
一人っ子政策の結果が及ぼした事とはいえ、個人的には情けない事態だなーと思いつつ、休日の人民広場を歩いている筆者でした。
Leave a comment