はじめに簡単な自己紹介をさせていただきます。日本でウエディングプランナーを経験後、中国の上海へ転勤となりました。上海でも日本と同じようにウエディングプランナーをしていました。
その中で感じたのが、
「上海人の結婚式は見栄でなりたっている」ということでした。日本では考えられない結婚式の儀式の数々、そしてお金をばらまくのがすごい!日本人の感覚では到底理解できない世界だと思います。それでは、過去に私が担当した結婚式を紹介したいと思います。
結婚式をする会場
日本の結婚式の場合、まず結婚式会場を選びますよね。でも、中国の場合は違います。まず、ウエディングプロデュースする会社を選びます。そこで、ウエディングプランナーを決定するのです。今後の結婚式の取り決めや打ち合わせはすべて、このウエディングプランナーと一緒に決める形になります。
ウエディングプランナーと一緒に結婚式会場を選び、衣装を決め、演出を決定していきます。披露宴会場には、ウエディングプランナーはおらず場所と料理を提供する場となります。結婚式を行う会場は主に5つ星ホテルが中心となります。中にはミュシュランに掲載されるような高級レストランで結婚式をする場合もあります。
ポイントは如何に有名で高級であるか!ここも見栄を張るポイントなのです。上海で私が担当した人気の結婚式会場は、パークハイアット上海。日本でもかなり有名な高級ホテルです。もちろん、披露宴の料理の価格も上海で一番高いと言っていいぐらいです。披露宴会場が高層階にあり、上海の夜景が一望できる人気の披露宴会場です。ただし、他のホテルに比べると披露宴会場が狭いため、ゲストが200人を超える場合は不向きとなりますが、披露宴会場を一つにせずに複数の会場で行うケースもあります。会場と会場は、ビデオ中継でつなぎ新郎新婦はその都度披露宴会場を移動します。日本では考えられない光景です。下記は、実際のパークハイアット上海での披露宴会場の写真ですが、すごく高級感があります。
日本と大きく異なるのは披露宴において、新郎新婦が選択する料理が全て中華料理であるということです。五つ星ホテルであろうと、10人掛けてのテーブルに座り、円卓を囲むのが普通になります。
個人的には内心で
「ここまで西洋の文化にするのであれば一層のことフレンチにすればいいのに」
と思っていました。
下記は、ウエスティンホテル上海の披露宴会場の写真です。ここでもやっぱり円卓です(笑)不釣り合いだと思うのは、日本人の感覚だからかもしれませんね。
結婚式にかかる総額は?
日本の結婚式の場合、一人単価の平均は、5万円前後だといわれています。それでは、上海の一人単価の平均はというと、1万円前後です。これだけみれば安いじゃないか?と思います。しかし、この平均単価には少し日本と変わった事情があります。日本の場合の一人単価平均とは、装花やおふたりの衣装、引き出物などをすべて含んだ金額となります。上海の場合は「料理だけの価格の平均単価」となります。装花やお二人の衣装、そして会場の飾りつけやブライドメイドたちの衣装代など、日本とは異なものがあります。それらをすべて含めると、一人単価平均は3万円前後となります。
日本人の平均的なゲストの数は約60名×5万円=300万円
それに比べて上海は、約250名×3万円=750万円
上海人の給料平均は、約10万円。それを考慮するとかなり結婚式に費用をかけていることがわかると思います。見栄の張りすぎではないでしょうか(笑)もちろん、ご祝儀もありますが金額は日本の半分ほどです。結婚式はとにかくたくさんのゲストを呼ぶというのが一般的です。新郎新婦の知らない人、例えば両親の知人なども列席者に名を連ねます。
上海人の基本的な結婚式の流れ
朝から結婚式の儀式はスタートします。高級外車をレンタルし、新郎は新婦の実家に新婦を迎えに行きます。この際、新郎は伴郎(新郎の付添人)を数人引き連れていきます。高級外車は平均5台ほどレンタルを行います。車には、新郎や伴郎はもとよりプロデュース会社のスタッフ(カメラマンやDVDの撮影)なども乗っています。新郎の乗る車には下記のような装飾をするのが一般的です。
新婦の実家につくと、派手に爆竹がならされ新郎が来たことを知らせます。
その後、新婦の実家に行くのですが新婦の実家の扉を開けるためには紅包(お金)を渡さなくてはなりません。なぜなら、扉を開けた先には新婦の付き添いの伴娘がいて新郎の訪問を阻止しようとするからです(もちろん、本気ではなくお約束のようなもの)。扉を開けて中に入ってからも、新郎に無理難題を言ったりします。例えば、下記のような腕立て伏せをさせたり、新婦の好きなところを十個言わせたりといったものがあります。
その後、無事に新婦がいる部屋に到着すると今度は、新婦の靴を探すように言われます。新婦は結婚式の為に、新しい靴を用意しているのですが、ワザと隠して、新婦が部屋から出られないようにするのです。新郎は無事に靴を見つけ出し、その後ひざまずいて新婦にプロポーズをします。
その後、新婦のご両親へお茶を注ぐ儀式を行います。おふたりは、この時に両親からのご祝儀をいただきます。周りにたくさんの人がいるので、両親は相当の分厚さのご祝儀を渡します。これも見栄の一つだと思われます。
その後、ふたりは新郎の実家へ移動。出発の際も、到着の際もこれでもかっといった具合に爆竹を鳴らすのが一般的です。新郎の実家へ到着後、同じようにお茶の儀式を行います。新郎の実家が新居であればそこで、写真撮影を行います。異なる場合は、再び爆竹とともに別の新居へ移動し写真撮影、外にでて撮影をする場合もあります。
余談ですが、この流れは大体朝9時~スタートし16時(披露宴会場に到着する)までの間で行われます。すべての行事には伴郎と伴娘が付き添い、多い時には総勢15名ほどで移動することになります。両家のご両親は、部屋を結婚式のように装飾し、軽食や昼食を用意しています。この軽食や昼食は、私たちウエディングスタッフの分も用意されているのが一般的です。
ここでかかる費用を大まかに計算してみると….
高級外車のレンタル台 1台10万円前後×5台
もちろん、車種によって異なります。
紅包代 1500円×30袋。これだけで、54,5000円となります。
結婚式の見栄の張り方
1.結婚式の会場への持ち込みはOK
披露宴会場の円卓の上には高級たばこ(銘柄は“中華”限定)があり、中国のお酒である紹興酒や白酒、ワインが真ん中に並びます。如何に高級なお酒を並べ、たばこを配るかがポイントです!
2.テーブルの数は、招待客よりも多く用意
上海の場合、招待状をほとんど出しません。口約束なので、ゲストが確実に参列をする保障はありません。それでも、ゲストをより多く見せるためにテーブルの数をあえて多く用意するのです。テーブルの中には私たちスタッフ用にテーブルもあり、披露宴中はゲストと同じ食事を用意してくれていることが多いです。もちろん、テーブルを用意した分だけ料理代は発生をします。
3.披露宴の入り口には迎賓用のアーチ
披露宴会場の入り口には花で作られたアーチを用意し、そこでゲストの迎賓を行い、写真を撮ります。最近では、アーチだけでは物足りず、おふたりの等身大パネルを飾るケースもあります。
4.披露宴の中での独特の演出
新郎新婦が各テーブルを回る敬酒といった儀式があります。何をするかというと、各テーブルを回り、ゲストに新郎はお酒を注ぎ、新婦はたばこに火をつける儀式になります。子供のゲストがいるとその都度紅包を渡します。
5.お色直しは最低4回
基本的にウエディングドレスは2着。カクテルドレスは1着、チャイナドレスが1着といったパターンが一番多かったです。ウエディングドレスの2着を疑問に感じるかもしれませんが、これは朝からの儀式用としてのウエディングドレスが1着と披露宴で着用するウエディングドレスが1着となります。
6.スタッフへの心付け
披露宴がお開きになった後は、プロデュース会社全スタッフに紅包を渡します。ちなみにこの時の紅包は上記で挙げたものと金額が異なります。スタッフ用の紅包の中身の平均額は、15,000円ぐらいです。プロデュース会社から派遣されているスタッフだけでも10名はいるので相当な額になるのがわかると思います。これも当然、見栄です。ちなみに、日本における同様の心付けの5,000~10,000円です。
上海人の見栄は恐ろしい
よく上海人が、「面子が大切だ」と言っているのを聞きました。如何に派手に、如何に豪華にすることが大切なのです。決してお金持ちではないのに、結婚式のときはここぞとばかりにお金をかけます。また、上海人の結婚式の費用は新郎側が支払うのが一般的です。両家が恥をかかないためにも、豪華にお金を持っているかのように見せるのがポイントみたいです(笑)
まとめ
ここまで上海人の結婚式の様子を紹介してきましたが、上海人が如何に面子を重視するかと言うことがお分かりいただけたと思います。1人っ子政策の弊害から結婚適齢期を迎えた男女比がアンバランスな中国では結婚できない男性が多いです。加えて高額な結婚費用を新郎側で用意するのが一般的な上海においては、お金のない男性にとって結婚は非常に高いハードルとなっています。
見栄だらけの上海人の結婚式はいったい何の為にしているのでしょうか?私たち日本人には理解出来ない世界です。