世界の謎発見

なぜポーランド人は日本が大好きなのか

 

 ポーランドは、ドイツの東側に位置する東欧の国。作曲家のショパンや、天文学者のコペルニクス、物理学者のキュリー夫人など、実は著名人を多く輩出しています。

 ヨーロッパに行くと意外に存在感のあるポーランドですが、日本ではあまり、というかほとんど知られていません。その反面、ポーランドでは、日本がとてつもなく有名です。

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日本語学習が人気

 ポーランドに住んでみると、まず驚くのは、日本語学習の人気ぶりです。全国の4つの国立大学には600人近い日本学科生が在籍し、大学以外でも、5000人近くの人が日本語を勉強しています。

 国内随一の入学競争率を誇るワルシャワ大学日本学科を筆頭に、大学の日本学科に入るのは超難関と言われ、ポーランドで日本学科生たちはエリート中のエリートとされています。

 筆者も、ポーランドに行って、流暢な日本語を話す人にあまりによく出会うので、驚愕しました。見た目は今風の若者達が、口を開くと日本人よりも日本人らしい、洗練された口調で日本語を話すのです。

 漢字も得意で、こちらが知らない四字熟語まで知っていたりします。そんな彼らは、口を揃えて「日本には行ったことがない」と言います。留学も経験せずにどうやってここまで語学が上達するのか、と心底驚きました。

空手、茶道、能まで

 日本語の他にも、日本の武道や伝統文化が大変な人気です。武道の中でも、空手はポーランド国内に3万人の競技人口を抱えるほどの特別な人気で、国内各地に空手道場が作られています。

 茶道などの日本の伝統文化に対する関心も高く、日本人にも親しみやすいとは言い難い能・狂言なども、ポーランド人を惹きつけてやまないようです。どうやら彼らは「禅」を代表とする「無駄を排除したシンプルさ」といった、日本の伝統的な精神に強烈なロマンを感じるようです。

遠くて手の届かない存在、日本

 そんなポーランド人にとって、日本はあくまで遠くて手の届かない存在で、憧れです。遠いというのは距離的な意味だけでなく、心理的なハードルの高さも意味しています。

 ポーランド人のほとんどは、気軽に日本に行けるだけの所得がありません。首都ワルシャワでも平均月収は10万円程度、地方では6万円程です。生活の厳しさゆえ、国民の3分の1が他国に出稼ぎに出ています。

 ワルシャワでは状況はわかりにくいかもしれませんが、少し田舎に行けば、旧社会主義の象徴と言える団地型アパートが立ち並び、家の中には質素な家具や物が置かれ、かなり切り詰めた生活を送っています。

なぜポーランド人は日本が好きなのか

 恋愛感情に匹敵するほどの日本への愛情を、ポーランド人の日本研究者は、ある歴史上の出来事と結び付けて説明していました。

 ポーランドは元々、近隣の大国から幾度となく攻撃されてきた国です。1800年頃にはロシア、プロイセン(ドイツ)、オーストリアの三か国に分割支配され、123年間にわたって「ポーランド」の国名が地図上から消えるという屈辱を味わいました。

 ポーランドの憎き侵略国であるロシアに対して、日本は1900年初め、日露戦争で勝利しました。小さな島国の日本が、大国ロシアを倒した。これはポーランド人にとって、大変衝撃的な出来事でした。

 この歴史的勝利をきっかけとして、ポーランド人が日本に対して尊敬の気持ちを抱いたとしても不思議ではありません。

ポーランドは日本と同じ単一民族

 現在のポーランドは、ポーランド人が人口の97%を占める単一民族国家です。大都会ワルシャワでさえ、街に外国人、特にアジア人がいると目立ちます。

 筆者も、空港で警官に尋問されかけたり、街中で訳のわからない言葉でからかわれたり、不愉快な経験もしました。唾を吐きかけられた友人もいます。

 結局アジア人への差別感情が根底にあるのか、と思っていたある日、ポーランドの友人にそれを激しく否定されました。「君が受けたのは中国人差別だよ。日本人とわかれば、むしろみんな好意的になるはずだ」と。

 そういえば、初対面のポーランド人に出身国を明かした途端に様子が一変し、「日本人に会えた!」と喜ばれたり、「Sakuraは本当にすぐ散るの?」「日本食はどんな調味料を使うの?」などとある意味マニアックな質問攻めを受けたこともありました。ポーランド人の日本好きは間違いない、と確信しました。

 日本も単一民族国家ですので、ポーランド人となにかしら通じる要素があるのかもしれませんね。

ポーランドの一方的な片思い

 日本のことが大好きなポーランド人ですが、逆に、日本人はポーランドについてほとんど知りません。両国間は、残念ながらポーランドの片思いで終わっているようです。

 でも、互いの距離は徐々に縮まりつつあるように思います。昨年には東京とワルシャワの間で直行便が就航しました。隣国のチェコやハンガリーと一緒に周る、東欧周遊の旅も日本人には魅力的でしょう。ぜひみなさんにも、ポーランドを訪れ、彼らの日本に対する熱い気持ちを直に感じていただきたいと思います。

[参考記事]
「移民の国カナダで日本人の印象は良い?悪い?」

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