場所はイスラムの国、チュニジア。 6月初旬。時期はラマダン(イスラム教の断食月)。 日光が照りつける正午過ぎ、乗り合いバスステーションの裏側に回ると、サンドイッチや水を口にする老若男女。
ひと昔前に、こんな光景はなかなか見られなかったのかもしれません。イスラム教徒はコーラン(イスラム経典)に従い、一年に約一ヶ月の間。日の出から日の入まで一切の飲食喫煙をしません。
近年チュニジアではコーランの解釈が少しづつ柔軟になってきており、体調が悪い者、長旅に出る者は断食が免除され、 食べる特権が与えられると言う。 「俺は今日は、チュニスから南部までわざわざ服を売りに長旅するからラマダンしなくて良いんだよ。」 そう言いながら乗り合いバスステーションの裏で嬉しそうにサンドイッチを頬張り、コカコーラを勢いよく飲んでいた青年も、 基本的には普段ラマダンをしているという。
若者とラマダン
チュニジア国内でも、地域による断食に対する向き合い方の格差は大きい。 首都チュニスを離れ小1時間進むと、チュニジア名産のオリーブ畑が広がり、西洋化されていない人々の暮らしがある。そこでは、ラマダンは、「やらなければならない事」という認識が強く、ラマダンをしないという選択を取れる自由な雰囲気はない。
一方、首都チュニスでは、イスラム教徒と公言しながらも、ラマダンは時々しかやらないと言い切る若者も珍しくない。ラマダンの日中、Closeの看板が垂れ下がるカフェ、それにも関わらずやけに人が出入りする。
首都には、表向きは日中閉店としているが、実は昼も営業しているというカフェがいたるところにある。入店すると、外に垂れ下がるCloseの看板を忘れるほどの賑わいを見せている。シーシャ(アラブ諸国では一般的な水タバコ)を吸い、携帯をいじる人、コーヒーを飲むカップル、パフェを食べている女性グループなど。コーヒー一杯の金額は、平常営業時の倍するという。
17年5月に、ラマダンの日中に、野外で堂々と飲食をする若者が警察の注意を無視した結果、留置された事件があり話題を呼んだ。数日後には食べる権利を主張するデモがチュニスで行われた。チュニジアは、ラマダンを尊重はしつつも、多様性を認める時期にきているのかもしれない。
ラマダン中のレストラン事情
前項の通り、カフェに関しては、ひっそり営業をしているところが多数あるが、 殆どのレストランは閉まっており、大手チェーン店がテイクアウトをやっているのみ。たとえイスラム教徒ではなくても席に座ってゆっくり食事ができる場所はなく、レストランが日中に営業する場合は、許可証を取得する必要があります。
しかし、手続きが複雑かつ、敬虔で過激なイスラム教徒からアタックされる可能性も鑑みて、日中の営業を断念するオーナーが多い (特に非イスラムの外国人が多く住む地域でレストランを日中に開ける事ができれば一人勝ちらしい・・) 。外国人相手がメインという事情で昼もオープンしている5つ星ホテル内のレストランは連日満員である。
まとめ
ラマダン=断食と言うと、イスラム教に馴染みのない方は、ただただ辛い期間というイメージなのかもしれませんが、 実は、毎晩お祭りの雰囲気。昼の辛さを皆で乗り越え、日が落ちた後に好きなだけ飲食して良い許可が出ます。
夜のカフェは連日満員、大抵のサンドイッチ屋も賑わいを見せています。 お腹が極限まで減って我慢した後に食べるご飯の美味しさは、 イスラム教徒ではなくても、きっと誰もが経験した事があると思います。
「空腹こそ最高のスパイス」その言葉通り本当に最高です。 イスラム教の知人がいる方は、1日でも良いので是非一緒にチャレンジして、最高のスパイス(空腹)を味わってみてはどうでしょうか。