近年欧米をはじめとする海外へ留学をされる日本人が増えています。その一方、留学をしたものの、結局現地で日本人ばかりとつるんでいて、語学力の向上は思ったほどでもなかった、なんていう話も残念ながらよく聞かれることです。
筆者はこれまでにニュージーランドで一か月、ドイツで二か月ほど短期語学留学をした経験がありますが、その際にも日本人はどちらかというと日本人とばかりつるんでいた印象を受けました。
他方で欧米出身の学生たちは皆多国籍で行動しており、日本人と行動しがちだった自分は羨ましく思った記憶があります。
それではなぜ欧米出身の学生と異なり、日本人は多国籍の輪から外れがちなのか、私の経験を通じて考えてみたいと思います。
多国籍でフレンドリーなクラスメート達
私がニュージーランドで語学留学をした際には日本の大学のプログラムとして申し込み、同じ大学の学生と共に語学留学生活をスタートさせました。そして当然のことながら同じ大学の友人達とたびたび行動を共にしていました。
一方、ドイツで語学留学をした際には既に大学を卒業していたため自分一人で申し込み、現地にも一人で赴いて語学留学をスタートさせることとなりました。
ドイツでの語学学校初日、緊張しつつ到着したクラスでは多国籍の学生たちが出迎えてくれました。イタリア人にポーランド人、スイス人といった欧州系からイスラエル人、モロッコ人、そしてパレスチナ人といったアラビア系、そして韓国人と出身国は多種多様。
新参者の私に皆自己紹介をしてくれましたが、この時はフレンドリーな空気感に満ちており、「これならすぐに友達の何人かできるかな」と期待に胸を躍らせた記憶があります。
初日の高揚感から一転、こんなはずでは…
しかし、一抹の不安はありました。
それというのも、私の語学学校初日には、もう一人他にスイス人の新入生がいたのですが、その彼に何人かの学生が授業終了後に話しかけていたのです。
耳をそばだてて聞いていると、こんな会話が聞こえてきました。
「ねえ、スイス出身でしょ? 何か国語話せる? フランス語は?」
「フランス語は母国語だからもちろん話せるよ! あとは英語もかなり得意だよ」
尋ねていたのは同じくスイス人の女学生。スイスは国内で地域によってフランス語圏やドイツ語圏などと異なる言語が複数話されているため、自分の“母国語”であるフランス語で会話ができるか、女学生は気になったようでした。
しかし、そのような質問が私に投げかけられることはありませんでした。次の日から例のスイス人たちは行動を共にしていましたが、私が共に時間を過ごせる相手は見つかりませんでした。
なぜ日本人は孤立してしまうのか
それでも約一か月の時をクラス内で過ごし、共に課題をこなしたりするうちに、なんとなく他の学生とも会話を交わすようになりました。
中でもポーランド人の女学生は“Sushi”が大好きで、さらに来年日本を訪れる予定があるとのこと。日本人や日本の文化に関心があり、時たま日本について意見を交わしました。
彼女いわく、欧州と米国は国や言語、文化もそれぞれ異なってはいるものの、基本的に同じ文化圏に存在しており、価値観を共有しているとのこと。それに対し、日本をはじめとするアジアは欧米とは異なる文化圏にあるため、興味深くも価値観等を共有しにくいように思える、とのことでした。
さらに他の学生に言わせると、日本人はアジア人の中でも特に異なる価値観を持ち、さらに立ち居振る舞いも他の国の出身者とは異なるため、どう接してよいかわからない、と感じるとのことでした。
確かに私がニュージーランドにいた際も、他国出身の学生は少しでも気になることがあればすぐに質問し、活発に意見を交わすと共に、感じたことをはっきりと相手に伝えていましたが、それに対して日本人はクラス内でも目立って発言が少なかったように思います。
その上、日本語は日本以外では話されていない言語のため、他国の出身者と母国語で話せる、ということはなく、言語上も壁が立ちはだかっています。
そのような様々な障害を乗り越え、語学学校で多国籍の友人を作るためには、言うまでもなく語学学習に専念し共通言語をいち早く身に着ける、ということが第一に求められます。
しかし、それと同じくらい重要なのは、海外の学生のエネルギーに気おされてだんまりを決め込んでしまうのではなく、自分から積極的にクラスに参加し、下手でもいから皆と意見を交わし合う、ということに尽きるのではないでしょうか。それでこそ語学学校に通っている効果が何倍にもなって帰ってくるというものです。
[参考記事]
「アイルランドの語学学校の日本人の割合や費用などを解説」