和洋中とは良く見聞きする単語ですよね。食事の場面で使われる事が多い単語です。和食、洋食、中華の意味で用いられます。極めて日本的な言い方で、世界の食事がこの3カテゴリーで分類されている訳ではありませんが、大まかな分類として多用します。
トイレの場合も、和式と洋式という言い方をします。和式の便器が設置されているトイレを最近は殆ど見る事もなくなりましたので、この分類に違和感を持つ世代も多いかもしれません。
それでは浴室はどうなのでしょうか?食事の様にも、トイレの様にも分類された言い方は無い気がします。とはいえ、洗い場と浴槽が分離されている日本の浴室と、洗い場が無くトイレと一体化している事の多い、いわゆるホテルのような洋風浴室とは明確に違いがあります。
では、中国の浴室はどうなっているのでしょうか?中華式浴室があるのでしょうか?気になりませんか!
<お風呂場は自分で決めて仕上げる>
中国は余りにも広大な国家なので、何事も一口で語る事は困難を伴います。民族も多様ですし、広大で、深い歴史を有し、日本と違って貧富の差も激しい国なので、これだと決めつけはできません。そこで、いわゆる沿岸部の大都市や、各省都などの大都市に居住する中国人家庭の情報としてご紹介致します。
現代の一般的な中国家庭の多くは、高層マンションに居住しています。中国のマンション事情については、「中国のマンションは購入しても内装は自ら行う」でご紹介しています通り、各住戸はスケルトンで販売されています。日本と違ってインテリアは何も施されていません。コンクリート打ち放しで販売されているので、購入者が自らインテリアを決めて工事をして住まいを仕上げるのです。当然浴室も自分達で広さを決め、浴室の内装をデザインし、仕上げます。
ただし、いくらスケルトンで販売されているからといっても給水給湯管と排水管の位置だけは事前に出来上がっていますから、自由に場所を決めることが出来るとはいえ、浴室の場所はある程度の制約があります。
日本の多くの住宅では、ユニットバス(システムバス)という、浴室全体を部材で囲み、組み立てる簡易乾式工法の浴室が採用されていますが、ユニットバスは日本と韓国の一部で普及しているだけで、世界の殆どの浴室は、「湿式」と呼ばれる在来工法で造り上げられています(日本でもユニットバス以外はこの工法です)。
つまり、左官工事でモルタルを塗って壁と床を仕上げ、タイルを張り、浴槽や洗面、便器を設置するというスタイルです。中国の浴室も、工法的には湿式工法で行われます。
<実は日本の浴室が世界的な例外例>
さて、肝心の浴室のスタイルですが、世界各国の例と同様に、浴室・洗面・トイレが分離されていませんし、洗い場もありません。中国の浴室のスタイルは、いわゆる西洋式と呼ばれる浴室と同様の3点式タイプです。つまり、浴室、洗面、トイレの3点の機能が一つの空間で収まっているという方式です。ホテルのバスルームと同様です。ですので、中華式浴室というのはありません。
日本の家では、浴室とトイレと洗面というのは基本的に全て分離しており、一つの空間にはありません。しかも浴室には洗い場と呼ばれる、身体を洗う為だけの空間が用意されています。この方式は日本特有の特徴と言えます。世界では大変珍しいです。
<お風呂の入り方は中華式>
3点式タイプの浴室と言っても、浴槽がある場合もあれば、浴槽が無くシャワースペースだけの場合もあります。浴槽がある場合でも、多くの中国の皆さんは浴槽にお湯を貯めて浸かりません。中国の皆さんにとっての浴槽は、日本人にとっての洗い場と同じ様な位置付けの様です。
お湯を貯めて浸かって身体全体をリラックスさせるという日本人的な利用方法でも無ければ、西洋の皆さんの様に浴槽にお湯を貯めてバスフォームで泡立てて身体を洗うという利用方法とも違います。中国の多くの皆さんは、単にシャワーで身体を洗います。ホテルのようにシャワーのお湯が室内にこぼれない様にするのが浴槽という認識です。
又、日本の住宅では必ず洗濯機置場も確保されていますが、中国の場合はまずありません。ですから洗濯機は大抵浴室の中に置かれています。これが多くの中国の皆さんの一般的な浴室と使い方です。形式的には西洋式ですが、使い方については中華式と言えるかもしれませんね。
しかし、最近では日本の温泉文化もある程度普及しており、大都市には「日式温泉」という看板が結構掲げられています。日本で言えばスーパー銭湯です。人前で裸になり、お湯に浸かるという風習が無かった国民が、こうした温泉で入浴し、気持ちが良いことを体感することで、自宅でもお湯に浸かる人たちが少しずつ増えています。
<浴室の事を中国語ではどう書くか?>
同じ漢字文化国ですが、中国語の浴室は日本語とは全く違います。日本語では、「お風呂」、「お風呂場」、「浴室」、「バスルーム」などと言うのが一般的です。中国語では「衛生間」と言うのが一般的な言い方です。3点式なので、「浴室」ではないのです。あくまでも、浴室と洗面とトイレが一体化している空間です。これらを総称して「衛生間」と言います。これは自宅の浴室を意味しており、前述したスーパー銭湯等の施設の事は「衛生間」とは言いません。公衆浴場の場合は「温泉」と呼ぶのが一般的です。「温泉」と呼びますが、本当の温泉が湧き出している施設という訳ではありません。
少し浴室から話は逸れますが、手を洗う場所やトイレが何処にあるのかを尋ねる時の言い方も、現代中国では「衛生間」を用いるのが一般的です。ちょっと前までは、トイレの事は「厠所」と言うのが一般的でしたが、現代中国では余り使われなくなりました。
また、手洗いの事は「洗手間」と言います。読んで字の如く手を洗う所の意味ですが、広くトイレの意味として使われますので、中国に行った折りにトイレを尋ねる場合は、「衛生間」か「洗手間」を用いて下さい。「厠所」はちょっと古臭い言い方です。
<まとめ>
中国の浴室は、スタイルは西洋式3点タイプで、使い方は独自の中華式。お風呂でリラックスするという生活習慣では無く、身体を洗うという実務的な場所と言える様です。
お風呂で浴槽に浸かって一日の疲れを癒す習慣の日本人とは、随分違いがありますね。お湯に浸かってゆっくりしなくても、リラックスできているという事なのでしょうか?!