私はアメリカ合衆国、イリノイ州で暮らしていましたが、その間に3つの家に移り住みました。購入した家は1つもなく、全て賃貸です。一件目から順に紹介しましょう。
一件目
最初に見つけた家は、円形のバックヤード(裏庭)の周りを家が囲むように立っているタイプでした。アメリカの家というのは、玄関に続くドライブウェイ(一般道路と家を結ぶ私用道路)の芝生以外に、この広大なバックヤードが付いているのがノーマルですが、こちらの家の敷地の広さは半端なく広くて、たぶんサッカーグラウンドよりも広かったのではないかと思います。
しかもご近所との境に塀があるわけではないので、学校から帰った子供たちが自由にサッカーをやっていることもしばしばあり、一体誰の所有地なのか分からないという具合でした。
バックヤードの片隅にはブランコがありましたが、こちらでよその子が遊んで怪我でもさせようものなら、裁判沙汰になる恐れもあるということで、チェーンを巻き付けて使えないようにしているという状態です。
また、とにかく芝生を枯らしてはいけないので、通常はスプリンクラーを使うのですが、ここの場所はズルズルとホースを引きずって移動させながらの使用になり、水撒きだけで、3時間くらいかかるという凄く手間のかかる土地だったのです。
初めての事だったので、日本から来たばかりで自宅のドアがオートロックだとも知らず、不用意に家から出てロックアウトしてしまったのもこの家でした。焦った私は見知らぬ隣人に助けを求めたのですが、どちらも留守。携帯電話さえ所持していない無防備な格好だったし、季節はまだ寒く、このままでは凍えると思った私は仕方なく自宅の地下室の明り取り窓から侵入すべく、二重窓を石ころで割って鍵を開けるという泥棒体験をしたのです。
幸いセキュリティーの装置は働いておらず、御用とはなりませんでしたが、そのあとが大変で、窓の修理業者に連絡すると、良くあることなのか早速2・3人の現地人が来てくれ、応急処置として、窓に板を打ち付けてくれました。
使えないDEN(小さい部屋)という部屋があったのもこの家です。子供部屋でもなく、なぜか玄関のすぐ横に設けられた召使部屋というものですが、日本人には使い勝手が悪すぎでした。納戸にするには小さすぎるし、とにかく玄関横なので、不用心で個室にも使えない。
あらゆる面を考えても、ただただ土地ばかり広い家だったと思います。そんなこんなで、二年の契約が済んだら、そそくさとこの家を引っ越しすることになりました。
二件目
二軒目に入居した家は、部屋数が多くて、全部で8部屋、そしてダイニングが二つ、キッチンが二つ、リビングに地下室、シャワー室が4つ、ジャグジー付き、トイレも4か所くらいあったのでしょうか。とにかく広すぎでした。
その上、ゴキブリならぬハツカネズミがちょろちょろ走り抜けるというお家で、お菓子などかじられてしまうので、スーパーでネズミ捕り器を買うことにしました。トムとジェリーで見たような小さな蒲鉾板みたいな板に針金がついているようなシンプルな作りなのですが、これが優れもので、朝起きるとしっかりとネズミがかかっているのです。可哀そうなネズミちゃんは仕掛けたチーズに食らいつこうとして、しっかりと首を挟まれているのでした。
こちらの家のバックヤードは大きくはなかったのですが、リンゴと梨の木が植わっており、これが季節になると想定外に実がなって食べきれず大変な思いをすることになったのです。放っておいた果樹は直ぐに腐って、甘い香りに誘われて蜂が集まってきて危険きわまりなく、仕方ないのでゴミ袋に入れるのですが、これが非常に重くて、ドライブウエイ(一般道路と家を結ぶ私用道路)から道路際のゴミ捨て場まで出すのに苦労しました。
ドライブウエイと言えば、各家の前の歩道に繋がっているのですが、こちらも各家の責任でいつも綺麗にしておかなければならず、冬なら雪が積もらないように、秋は落ち葉を掃除するのが当たり前です。隣の人が親切に掃除してくれることはまずないので、自分のことは自分でやる。変な気を遣うこともなければ、容赦もないわけです。ここは合理的なところかと思います。
備え付けのジャグジーは何度掃除しても、どこから出てくるのか黒い汚れが浮き出てくるので、結局は宝の持ち腐れ状態となりました。結局、掃除の大変な家でしたが、オーナーの都合で二年でこの家を去りました。
三件目
三軒目の家は中国人がオーナーで、なかなかこじんまりとした使い勝手の良いお家でした。
驚いたのは入居したての時、洗濯機が錆びて汚いので、オーナーに話したところ、早速やってきたオーナーが洗濯機にペンキを塗りだしたこと。だいたい家電のシンプルさは半端なく、日本だったら当然あるような機能やボタンがない。これで動くんだと感動するほど昔からの型が使われている上に、ペンキまで塗っちゃうのだから凄いとしか言いようがないだろう。
ただ、セントラルヒーティングは感動もので、家じゅうどこでも温かい。きっとヒートショックなんて無いだろう。でもやり方はいたってシンプル。ダクトと言われる巨大なアルミホイルで囲んだような管を通して各部屋に冬なら暖気、夏なら冷気が運ばれるのだから凄い。この管の中、いったいどうなっているのか。相当汚れているのではないのか。考えるだけでも怖いので、考えないように暮らしたのである。
この家、家の向かいは丘のようになっていて、冬になれば雪ぞりしている子供たちで賑やかだったのですが、動物も多く現れ、キッチンで仕事をしていると、デッキからリスがトントンノックして、餌くれ状態で呼んでくるような環境にありました。ある日のことでしたが、誕生日に冷蔵庫の代わりにデッキに出していたケーキをリスにやられてしまったこともあります。
シカゴの冬はとてつもなく寒く、体感マイナス40度なんて驚異的な日もあり、冷蔵庫に入れるより、デッキに出した方が冷えるなんてことは当たり前だったわけですが。動物たちが厚かましいのは、それだけ人間社会に溶け込んでいるという証なのかもしれません。
アメリカ生活6年半。日本に帰国して思うことは、アメリカのお家は手入れが大変。お家の外観を綺麗に保つ努力をすることは当然。芝は常にグリーン。落ち葉は綺麗に掃除し、ドライブウエイもすっきりとされていること。
少しでも芝を伸ばそうものなら、パークディストリクトから注意書きが入ることになるので、笑いごとではない。そういう事には厳しいのも、アメリカ人の特徴なのかもしれませんね。是非皆さんにもアメリカ生活を経験して頂きたいと思います。
[アメリカ記事]
「アメリカと日本のスーパーマーケットの違いとは」