チョンセという韓国独自の賃貸制度
韓国で結婚する際、新郎側→家、新婦側→家具一式を準備するという決まりがあります。
まず、新郎側の家の用意ですが、韓国の家賃形態は少し特殊です。入居前にチョンセという保証金を払い、月々の家賃は無料か数万円のみで、退去時に保証金が全額返金されます。なぜ、無料で提供できるのかと言えば家主が保証金を資産運用して利益を得ているためです。
チョンセは年々高騰しており、最近では最低でも1000万円からです。大抵はチョンセをローンを組んで払いますが、親が事業をやってる人など富裕層クラスはキャッシュ一括で払う人も割といます。よって、韓国人男性はお金がないと結婚するのが難しく、日本のように同棲の延長でそのまま住む等のケースや男性が若くしての結婚はあまり聞きません。
韓国人の見栄
家同士の結婚という意識が日本よりも強く、結婚式を挙げた日が結婚記念日となり、ただ入籍しただけでは妻として扱われません。私の場合、結婚式を挙げたその日から名前ではなく、ミョヌリ(嫁)と呼ばれるようになりました。
それほど結婚に対して重きを置くので、その分住まいの準備もきちんと行わなければなりません(見栄っ張りという国民性も関係してるのかもしれません)。私たち夫婦も、遠距離恋愛をしながらチョンセを貯めていましたが、1000万円まではほど遠く、まずはワンルームで主人だけの稼ぎで生活できるのかとお試し同棲から始めました。
ワンルームの時は、知り合いの不動産屋に頼んだので、保証金は免除してもらい月々4万円ぐらい払っていました。私がわざわざ渡韓してきたということで、同棲2ヵ月後に義父母が家(主人の実家の横の空き家)を準備してくれました。
新婦側の家具の準備
そして、新婦側の家具の準備です。ホンス(婚需)と言い、いわゆる嫁入り道具です。家電製品一式と家具一式を購入しますが、お店側もホンスという扱いでセットで販売します。基本、家具はそのお店一店舗で一式を揃えなければならず、ベッドは気に入っているけど、クローゼットは気に入らない等、納得が出来ないところもありました。布団購入時も、1軒のお店でセットで買わされましたので、中には気に入らない色やデザインがありました。
韓国はコネを利用する文化があり、ホンスを購入した時も知り合いの紹介で買いました。どこへ行くにも、何をするにも『知り合いがいる』と言われます。保険に入る時はありがちですが、〇〇を買いたいというと、はるかに遠い知り合いを紹介されます。
また、病院に行く時も「知り合いが通っていたから、〇〇先生を頼っていきなさい」などと言われます。更に、食事に行く時ですら、知り合いがやってるお店に行けと言われ、指定された場所にとりあえず顔を出すという形が多いです。知り合いという点で、その分サービスをしてくれます。
私もホンスの家電製品は、知り合いのところで購入しました。基本的な家具一式と、料理のためのミキサーとホットプレートや布団専用掃除機を追加し、かなりの割引をしてもらいました。
お店側としては、まとまった売上が出るので過剰なサービスをしてでも、1件の購入者を獲得したいということだと思います。そして、おまけとしてくれる品も豪華でした。洗剤やタッパーのみならず、フライパンセット、ハンド掃除機、ドライヤー2台、さらには扇風機まで。もちろん高価な質の良いものではありませんが、機能すれば十分です。とても助かりました。
サービスは、それだけでは終わりません。周りを見ると、夫婦+姑の3人で来てる人が多いのです。なぜかというと、担当者と商談や契約の際、姑が金額交渉をするからです。私が家具を購入した際も、会計の時だけうちの姑が登場しました。韓国人女性は気が強い人が多いですが、何とも強引な交渉術です。
当時韓国では、3Dテレビが流行していた時でしたが、付属の3D用メガメを本来は2つのところを4つ頂きました。姑が、『友達はよそで買ったときに4つもらった』と主張をしたからです。ドライヤーも本来は1つのところ、わざと店員の前で、姑が「うちのドライヤーが壊れたから、これ頂戴」と私に対して言ったことにより、聞いていた店員が「では2つあげますよ!」という(半ば投げやりな)形になりました。
とにかく主張が強いので、得をしていることがたくさんあると思います。いつかは私もここまで強くならなければいけないのかと、その時感じました(笑)現在は、そこまで強い主張は出来ませんが、加齢も手伝って図々しくなったと思います。今では、韓国で賢く生きていくための知恵だと思っています。
その時の家具は、購入してから4年半経った今でも、大事に使っています。私の両親が嫁に出すのに恥ずかしくないようにと、嫁入り道具の費用をお祝いでくれました。両親の想いがこもっているので、これからも長く大切に使っていこうと思います。