世界の謎発見

[ヨーロッパの水事情]ベルギー人の夫の変な習慣の原因は水だった

 

 私の夫はベルギー人。もう7年も前の話になるが、今でも忘れられない面白いエピソードがある。初めて彼の家を訪れた際、ベランダに干された彼の洗濯物を見て私はあっけにとられた。Tシャツもパンツも靴下も…とにかく全てが赤一色だったのだ。「この人は赤の服しか持っていないのだろうか…」と彼のセンスを疑った。

 しかしその次に彼の家へ行くと、洗濯物は全て白一色。そして3度目は青一色。「この人はとてつもなく神経質な性格かもしれない…変な習慣を持っているな」と少し恐ろしくなったことを覚えている。

 その後、彼と結婚し、ベルギーへ移り住んだ筆者。そこで初めて気が付いた。あの時の彼の謎な行動は、ヨーロッパの水が硬水である為だったのか…と。日本の軟水に比べ、ヨーロッパ(ベルギーなど)の硬水はマグネシウムとカルシウムを多く含む。代謝の促進、脂肪吸収の抑制、便秘の改善…など体に嬉しい効果が期待できる一方で、日常生活ではこの水の石灰質に悩まされる事が多い。

 では具体的にどんな問題があるか。その解決策と共にご紹介しよう。

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■白い服は黒ずみ、黒い服は白くなる

 硬度の高い水は洗剤が溶けにくく、泡立ちも悪い。冷たい水で洗うと石鹸カスが衣類に蓄積し、やがて白い服は灰色に…黒い服は白っぽく…なってゆくのだ。その為、ヨーロッパでは洗濯物をお湯で洗う。一般的な洗濯機は、30度から90度まで水温の設定ができるようになっている。

 だが、お湯で洗うと新たな問題が…。衣類の色落ちが激しいのだ。だから色別に洗う家庭も多い。当時驚いた、ベルギー人である夫の謎な行動は、この習慣からくるものだった。

 また、ヨーロッパでは洗剤や柔軟剤の種類が豊富であり、黒い服をより黒くする為の洗剤まである。大抵どの家庭にも数種類の洗剤がストックされており、それを上手に使い分けて洗濯するのだ。

■洗濯機のお手入れも一苦労。

 硬水での洗濯は、洗濯機のお手入れにも一苦労する。使い続けるうちに、石灰分や固まった石鹸カスが洗濯機の内部に溜まりあっという間に故障してしまう。

 そこで使うのがカルゴンという硬水軟化材。使い方は簡単。洗濯の際通常の洗剤と共にこのタブレットを入れるだけ。カルキを取り除くと同時に、洗濯機内のカビ予防もできる為一石二鳥という訳だ。

ヨーロッパの生活の知恵、節約術

 ヨーロッパでの生活に欠かせないカルゴン。しかしこれが結構お高いのである。毎回の洗濯で使用するとなるとかなりの額に。

 そこで役立つ裏技が「酢の力でカルシウムを溶かす‼︎」というもの。カルゴンより遥かに安いビネガーを洗濯の際ちょこっと混ぜて使うだけでOK。小さい子供のいる家庭でも安心して使え、環境にも優しい解決策だ。

 しかもこの酢が活躍するのは洗濯時だけではない。キッチンの水回りやバスルームなど…ヨーロッパでは水のある所はどこでも、真っ白な石灰の水垢がまるで塩の塊のようにこびり付く。そんな時は、酢をシュシュッとスプレーで吹きかければよい。見事に汚れが落ちピカピカになる。お寿司や酢の物、甘酢餡…日本では美味しく頂いていたが、ベルギーへ移住してからというものお掃除用品としての出番が遥かに多くなったお酢である。

まとめ

 日本を出るまで、蛇口から出てくる水になんの疑問も違和感も抱かなかった。だが今は日本へ里帰りし湯船に浸かると、日本の水の滑らかさ・柔らかさを身をもって感じる。水が変われば生活習慣もガラリと変わる。

 私達の体を作り命を支える水。無色透明、無味無臭であるがゆえに気付きにくいが、日々口にしている水についてもっと真剣に考えるべきだ。自然環境に優しい生活を心がけ、日本の清流を守っていきたいと思う。

[参考記事]
「フランス人は毎日お風呂に入らないって本当?」

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