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突然画面が真っ暗(ブラックアウト)になる中国のテレビ放送の訳とは

突然画面が真っ暗(ブラックアウト)になる中国のテレビ放送の訳とは

 中国でテレビをつけるとびっくりします。何せチャンネル数が多いのです。なのに放映内容は似たりよったりで面白みに欠けます。

 数が多ければ良いという物ではありませんが、広大な国家であることから、全国放送の中国中央電視台(国営テレビ)以外にも各省で様々な放送局があり、地域によってはそれらを混在して見る事ができるのでチャンネル数が多いのです。

 数が多い割につまらないのですが、見ているうちに気づく事があります。生放送が余りに少ないという事です。何故だと想いますか?

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都合の悪い事を封じ込める仕組み

 共産主義国という統制国家であることから、メディアに対する締付けは尋常ではありません。共産主義というのは中国共産党一党独裁という意味で、政治体制の内部に中国共産党を批判できる勢力は排除されている「いびつな仕組み」です。

 一党独裁というのは、中国共産党を批判する事が許されない体制であって、新聞、テレビ、ラジオ、インターネット等のメディアは、全て中国共産党の厳しい統制下にあります。ですから、中国共産党にとって都合の悪い事は報道されない仕組みになっています。テレビに生放送が少ないというのは、この事に密接に関わっているのです。

生放送が少ない理由

 メディアの報道に目を光らせている立場からすると、生放送くらい危険な放送パターンは無いという事はおわかり頂けると想います。録画放送であれば、事前に検閲することができますが、生放送で何かが報道されるとすると、事前に原稿の検閲はできたとしても、実際には何が起こるか分かりません。

 万が一事前に検閲した報道内容とは違う内容を話されてしまっては、中国共産党に都合の悪い事実が国民に知れ渡る可能性が残ります。

 ニュース番組であれば、生放送であっても事前に原稿の検閲が可能ですが、対談番組であれば、出演者に歯止めをかけたとしても、突然事前打ち合わせとは違う内容が話されてしまうとも限りません。

 一度そんな事態が発生すれば、出演者は仕事を失うと共に、どんな処罰をされるのかもわかりませんから、実際は発生し得るとは言えないのですが、中国共産党側からすると怖いのでしょう。

 ですから、中国のテレビ放送では生放送がニュース番組かスポーツ番組以外は極めて少ないという現状があります。但し、日本のテレビであっても、不規則発言や放送禁止用語を事前チェックする為に、多くの番組が録画報道されているので、生の音楽番組やスポーツの生中継、その日のニュース番組以外の生放送は少ないので、中国だけ特別視するのもどうかとは思います。但し、日本と中国では、政治的な検閲の有無による違いがあるという事を御承知おき下さい。

突然のブラックアウトにびっくり!

 中国のテレビを観ていると突然画面が真っ暗になってしまうことが多々あります(これをブラックアウトと言います)。国営の中央電視台の放送や、地方放送局のドラマや映画などでは起こりませんが、我々外国人が観ている外国のテレビ局の場合はそれが多々発生します。

 日本人である我々は、NHKの海外放送であるNHKワールドをよく観る訳ですが、日頃テレビでNHKワールドを観ていると、突然画面が真っ暗(ブラックアウト)になるのでびっくりする訳です。最初はテレビが故障したのか、停電になったのかと思ったのですが、チャンネルを変えるとちゃんと見えますし、室内に電気はちゃんと点いているので、テレビの故障でも停電でも無い事が分かります。画面は数分すると元に戻るのです。

 何故?

 最初は分からなかったのですが、度々起こるこのブラックアウトをつぶさに見ていて分かって来たのです。これこそが中国共産党が最も報道したくない内容を検閲して放送をシャットアウトしていたのです。

生放送ではないからできるシャットアウト

 画面のブラックアウト(画面が真っ暗)が発生するのはニュース番組で多々発生しています。NHKのお昼や19時のニュース番組を観ていると、真っ暗になる事が多々起こるのです。つぶさに観ていると、政治的なニュース報道になった時に真っ暗になっている事が分かって来ました。例えば尖閣問題であったり、台湾の報道であったりという場面です。

 アナウンサーが「次のニュースです。台湾で、」ブチっと真っ暗になって数分その状態が続きます。数分すると次のニュースをアナウンサーは読んでいるのです。間違いなく中国共産党が国民に知らせたくない内容の部分の放映をカットしているのです。しかし、どうしてそんな事ができるのか?それは、生放送ではないからなんです。それも分かって来たのです。

数秒間のタイムラグで放送される外国放送

 NHKワールドの様な外国放送の場合、中国の視聴者に対しては数秒ずらして放送しています。外国の放送ですからタイムラグの範囲内とみる事もできる位のほんの数秒だけ意図的にずらして放送しているのです。

 その数秒の間に、中国共産党にとって不利益になる報道か否かを判断して、不利益だと想定できる放送の場合に放映をカットしているのです。前述の例で言えば、「次のニュースです。台湾で、」と台湾の名前が出た途端に、有無を言わさずにカットしています。内容が中国共産党に不利益かどうかは分からなくても、台湾という政治的に微妙な報道についてはカットするという内規でもあるのでしょう。

 ですから、中国で放送されている外国放送というのは、全て数秒ずれて放送しているのです。たったの数秒とはいえ、もうこれは生放送ではないのです。その数秒の間が、中国共産党の勝負なのです。

まとめ

 これが中国のテレビ放送の実態です。可哀そうな人たちだと想いませんか。メディアの報道を逐一チェックしてカットしている仕事をさせられている共産党員も、真実を知らされない一般国民も、みんな可哀そうな人たちだと思うのです。

 それにしても、人海戦術でこの作業をする為に、膨大な人員が雇われています。これも一つの就業機会ですが、それを思うと更に可哀そうだと思います。中国に行かれる機会があったら、テレビでNHKワールドを観てみて下さい。きっとここに記載した現象に出会う事ができます。

[中国記事]
「中国国民は本当に反日なのか。中国在住10年の著者から見た中国」

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